日本ナショナルトラスト、「地域遺産支援プログラム(トラスト・エール)」に全国4つの民間団体を採択


重要文化財 旧矢中家住宅 別館食堂(提供:NPO法人"矢中の杜"の守り人)

 公益財団法人日本ナショナルトラストは3月7日、「地域遺産支援プログラム(トラスト・エール)」に全国4つの民間団体を採択したと発表した。採択したのは、NPO法人”矢中の杜”の守り人(茨城県つくば市北条地区)、門脇家住宅等保存協力会(鳥取県西伯郡大山町所子集落)、滝上ふるさと研究会(北海道紋別郡滝上町)、東かがわ市引田 町家マッチングプロジェクト(香川県東かがわ市引田地区)。

採択された4地域(詳細は下記参照)

公益財団法人日本ナショナルトラスト(東京都千代田区、会長:安富正文、以下JNT)は、自立的・持続的な保存・活用の仕組みづくりを支援する新事業「地域遺産支援プログラム(愛称:トラスト・エール)」を開始します。全国4つの民間団体を採択し、2025年度から専門家と連携しながら、担い手確保、資金調達、組織基盤の強化やまちづくりの課題解決等、総合的に伴走支援を行います。

 

地域遺産支援プログラム(トラスト・エール)実施の背景

人口減少による地域の文化遺産の現状

人口減少や過疎化の進行、それに伴う地方財政の逼迫等により、地域の歴史・文化を物語る日本各地の文化遺産も、保存・活用を行う地域の団体の担い手や資金の不足が課題となっています。今後、こうした社会的課題がますます加速すれば、観光資源ともなり得る文化遺産が失われ、地域の衰退を招く恐れがあります。

地域遺産支援プログラム(トラスト・エール)

人口が減少していく中で、かけがえのない文化遺産を次の世代に受け継いでいくためには、その担い手となる団体が外部の団体や人材と連携し、発信をしながら関係人口やファンなど協力の輪をつくり、地域全体・社会全体で文化遺産の保存・活用に取り組むことが重要です。

JNTでは、これまで英国のナショナルトラストをモデルに、文化遺産を自ら所有して守る、ハードに重点を置いた事業を行ってきました。しかしながら、上記のような問題意識から、2018年の設立50周年にあたり「日本型ナショナルトラスト」を目指すことを宣言し、資産所有による「ハード」事業に加え、ノウハウ提供等の「ソフト」事業を拡充することとし、その具体的な施策として「地域遺産支援プログラム(トラスト・エール)」を創設しました。

本プログラムでは、JNTがこれまでに培ってきたノウハウ・知見やネットワークを活用し、文化遺産を保存・活用する民間の団体を支援することで、地域で自立的かつ持続的に文化遺産が守られる仕組みづくりが行われることを目指します。

※関連情報:http://www.national-trust.or.jp/prg-chiikiisanshien/

2025年度採択結果

本プログラム初の公募となった今回は、以下の4団体が採択されました。今後、各団体はJNTと連携しながら、各々が保存・活用に取り組む地域の歴史・文化遺産や自然遺産(以下、地域遺産)において、テーマに沿った活動を展開していきます。

 

(1)NPO法人”矢中の杜”の守り人(茨城県つくば市北条地区)

対象とする地域遺産:旧矢中家住宅 ※国の重要文化財

テーマ:「文化と防災」でつながる地域遺産保全体制の構築

重要文化財 旧矢中家住宅 別館食堂(提供:NPO法人”矢中の杜”の守り人)

 

(2)門脇家住宅等保存協力会(鳥取県西伯郡大山町所子集落)

※所子集落は重要伝統的建造物群保存地区

対象とする地域遺産:門脇家住宅 ※国の重要文化財

テーマ:地域を巻き込んだ重要文化財の持続可能な活用方法の構築

重要文化財 門脇家住宅(提供:門脇家住宅等保存協力会)

 

(3)滝上ふるさと研究会(北海道紋別郡滝上町)

対象とする地域遺産:千野家ハッカ釜

テーマ:ハッカ釜の保存の可能性を探り、ハッカ文化を活用した取り組みを模索する。

往時のハッカ文化を今に伝えるハッカ釜。滝上町では現在も和ハッカ国内生産量の9割以上を生産する。

 

(4)東かがわ市引田 町家マッチングプロジェクト(香川県東かがわ市引田地区)

対象とする地域遺産:引田地区の町家(空き家等)

テーマ:引田「町家マッチングプロジェクト」事業

引田地区の町並み

今後の取り組みと展望

JNTは、2025年度より3年間の事業期間で、各団体と連携しながら文化遺産の保存・活用における担い手確保、資金調達、組織基盤強化、まちづくりの課題解決等を総合的に支援します。具体的には、JNTがコーディネーターとして各団体の取組みに伴走し、事業の進捗状況にあわせて、関係機関や専門家と協力しながら以下の支援を行います。

  • 地域遺産の保存・活用のノウハウや情報の提供
  • 企画支援
  • 活動の幅広い情報発信
  • 市民への啓もう活動に対する協力
  • 専門家や他の中間支援組織との連携の確保 他

本プログラムは助成事業ではないため、事業にかかる資金は各団体が自ら調達しますが、各団体は、JNTから年間100万円を上限に各団体の課題にあわせて研究者やコンサルタント等の専門家の派遣を受けることができます。こうした専門家の支援のもと課題解決に取り組むことで、地域が資金調達を含めたノウハウを得て、事業終了後も自立的に活動が持続することを目指します。

 

オーバーツーリズムにより観光資源への悪影響も懸念されるなか、地域が自立的に文化遺産を保存・活用できる仕組みをつくることで、その価値を持続的に高めながら、地域への理解・関心を持つ人々を増やし、地域の活性化につながることを期待しています。

公益財団法人日本ナショナルトラストについて

JNTは、日本のすぐれた文化財や自然の風景地などを保全し、利活用しながら次の世代につなげていくことを目的に活動しています。英国の環境保護団体である「ザ・ナショナルトラスト(The National Trust)」をモデルに「財団法人観光資源保護財団」として1968年に設立され、1992年には名称を「財団法人日本ナショナルトラスト」とし、その後、2012年に公益財団法人となりました。

設立以来50年以上にわたり、各地の自然・文化遺産の調査・保護やその価値の普及に取り組んでおり、現在は京都市指定有形文化財・駒井家住宅、東京都指定名勝・旧安田楠雄邸庭園、世界遺産・白川郷合掌造民家、歴史的鉄道車両トラストトレイン等を所有し、保存・活用しています。その活動は、地域の方々や会員・ボランティアをはじめとした皆さまのご支援により行われています。

【団体概要】

名称:公益財団法人日本ナショナルトラスト

設立:1968年(昭和43年)12月25日

所在地:東京都千代田区麹町4-5 海事センタービル

代表者:会長(代表理事) 安富 正文

事業内容:文化財や自然の風景地など観光資源の調査、保護、支援、普及活動等

ウェブサイト:http://www.national-trust.or.jp/

Facebook: https://www.facebook.com/japannationaltrust

X: https://x.com/JNT1968

Instagram: https://www.instagram.com/japannationaltrust/

 

 

 
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