旅行会社出身の学会員が多く在籍する日本国際観光学会は9月26日、東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催されたツーリズムEXPOジャパン(TEJ)で、「今後の旅行会社の人材育成」と題するセミナーを開いた。JTB相談役の田川博已氏による基調講演のほか、同氏と島川崇・神奈川大学国際日本学部教授、神田達哉・宝塚医療大学観光学部准教授によるパネルディスカッションが行われ、旅行業のあるべき姿、旅行会社に求められる人物像などについて話し合われた。司会は、同学会・監事の辻野啓一氏、常務理事の矢嶋敏朗氏が務めた。
冒頭、同学会の会長・崎本武志氏が登壇。「私がJTBで働いていた当時社長でおられた田川相談役からご卓見を賜れることは何よりの光栄。旅行業界や観光業界の人材募集・育成問題の過渡期を迎えている今、学会が誇る先生方のお話をお聞きし、今後の観光業を担う若い方々を育てていただきたい」とあいさつした。
田川氏「地域と価値共創する『人間力』を」
基調講演では、田川氏が「ツーリズム産業への脱皮」をテーマに、新たな旅行業の在り方について講演した。
田川氏は冒頭、旅行業の源流について説明。ツーリズムの定義が「人々の流れを創出し、交流・消費を促すとともに新たな価値観を作り出す活動」であるとした上で、旅行業とは、トラベル(旅行)とツーリズム(移動・交流)を組み合わせた「T&T」により、豊かなライフスタイルを作ることだと説明した。
加えて、観光立国推進基本法の基本理念に定められている「住んでよし、訪れてよしの国づくり」を引用し、今後は観光で地域を活性化すること、地域住民を街づくりに参加させることが重要だと指摘。今後の旅行会社に求められる人物像として、地域とともに街づくりに参加できる能力、住民の視点に立って地域観光を俯瞰できる能力が求められていると説明した。
田川氏は、「地域住民の熱い思い(郷土愛)、市場に対する洞察力と行動力。これら三つが合わさって発揮される『人間力』が観光街づくりに重要だ」と指摘。旅行会社の経営者には、この「人間力」を増すための人材育成が求められると総括した。
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