日本国際観光学会(JAFIT、崎本武志会長=江戸川大学社会学部教授)は19日、第28回全国大会を東海大学・品川キャンパスで開いた。総会パネルディスカッション「『観光と外交』研究の視座と可能性」には、小澤考人氏(東海大学観光学部教授)をコーディネーターに、宮崎裕二氏(東洋大学国際観光学部准教授)、渡邊啓貴氏(帝京大学法学部教授・東京外国語大学名誉教授)、崔載弦氏(東海大学観光学部准教授)が登壇。アルラジ・ヤラ氏(アブドゥルアジーズ大学卒、東海大学大学院文学研究科修了)がサウジアラビアからオンライン参加した。
小澤氏は、「国際観光振興とは外交政策でもある。21世紀に入るころから、世界各国は国家戦略として『国際イベントの誘致と連動した国際観光振興』に本格的に着手し始めた。その際、ソフトパワーの考え方に基づく優れた意図的な外交戦略が展開されている。他方、日本でも2021年東京五輪や2025年大阪・関西万博の開催に向けて、特にインバウンド振興の取り組みが加速化してきたものの、外交戦略の観点はまだ希薄であると見受けられる」と指摘。
宮崎氏は「英国の国際観光振興におけるパブリック・ディプロマシー/PD実行部隊を担うイギリス国家DMO」を解説。「ハードパワー(力による外交・国際関係)とソフトパワー(魅力や相互理解による外交・国際関係)があり、後者に属するパブリック・ディプロマシー(公共外交)は、文化外交(カルチュアル・ディプロマシー)と呼ぶべきもの。英国は、観光&イベントを、国家ブランドを測る一つの指標と位置づけている。ツーリズム・ディプロマシーで相手国民との本質的なつながりを形成。観光客、高度人材、留学生、起業家を魅了する国家ブランディングにつなげている」と述べた。
渡邊氏は「文化外交とソフトパワー戦略・フランスの事例から」で登壇。「相手国の国民に働きかける広報外交には、プロパガンダ(宣伝外交)とパブリック・ディプロマシーがある。後者は、双方向的・民主的・公平な立場からの広報外交でありフランスでは『影響力外交』という言葉を使う。平和と安定のイメージ=ナショナルブランディングだ。日本観光と文化外交では、ヒト・モノの交流から知的交流の活性化へと『創造性の活性化』を図る必要がある」と指摘した。
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