日本工学院専門学校(東京都大田区)の情報ビジネス科ホテルコースは10月15日、星野リゾートの星野佳路代表による特別講義「旅の楽しさをつくるテクノロジー~AIに負けないあなたのセンス~」を同校内の片柳記念ホールで行った。情報ビジネス科の学生全員などが参加。ホールで250人、オンラインで800人が受講した。
星野代表は、同社の現況について「ホテル・旅館を直接所有せず、運営に特化することでビジネスを拡大してきた。10月時点での数字になるが、運営施設数は国内47軒、海外4軒の計51軒。社員は4千人。取扱高は463億円」と説明した。また「リゾートホテル、温泉旅館にとって最も大切なのは顧客満足度(CS)。事前情報を分母、体験を分子とすると、現地での体験が事前期待を上回れば、顧客満足度が上がり、リピーターの獲得や、SNSやOTA上での好意的な口コミ増加による新規予約の獲得という好循環が生まれる。星野リゾートでは、このCS情報をITの活用によって見える化している。4千人の社員が顧客満足度に常にアクセスできることが、オリジナル体験コンテンツの進化、発展にもつながっている」と話し、宿泊施設にとってのCSの重要性とITの戦略的活用の意義を強調した。
その上で「AIは集めたデータを整理するのは得意だが、皆さんの想像力、発想力を超えることは絶対にできない。AIは囲碁将棋が得意だが、雪かきは苦手ということだ。AIが苦手としているところに『良い塩梅』を創る能力を磨いてほしい。観光分野では、顧客データに基づいて、発想し、考えることが強みとなる。AIの役割は、社員が活躍するための情報を早く提供することに尽きる。AIと良いチームワークを組むことが大事だ」と話した。
星野代表は、(1)ITは、戦略遂行に欠かせない多くの要素の一つであり、一つでしかない(2)AIは、われわれが生きている間は、われわれを超えることはできない(3)信じるべきは、自らの戦略的思考力である(4)リアルビジネスの最前線経験が思考力を高める(5)戦略的思考こそが運を呼び込む―とまとめた。
講義終了後の質疑応答で、学生から旅館・ホテルを目指す上でのアドバイスを求められた星野代表は、「神社に行ってほしい。全国の土地土地には氏神様がいる。星野リゾートでは宿泊施設の建築、建て替えなどに当たっては、必ず神事を行っている。努力と運、そして神が大事だ」と回答した。
同校のホテルコースは20年4月開講。21年4月から星野リゾートとの教育連携を開始し、星野リゾートが講師の派遣やインターンシップの受け入れなどの協力を行っている。
学生の質問に答える星野代表