日本銀行はこのほど、地域経済報告(さくらレポート)の4月分を公表した。全国9地域の景気の総括判断は、全て「拡大」または「回復」だった。前回調査(1月)との比較では、2地域が判断を引き上げ、6地域が据え置きで、北海道のみ判断を引き下げた。「海外経済の着実な成長に伴い、輸出が増加基調になる中で、労働需給が着実に引き締まりを続け、個人消費が改善するなど、所得から支出への前向きな循環が続いている」。
「拡大」「緩やかに拡大」などとしたのは北陸、関東甲信越、東海、近畿、中国、九州・沖縄の6地域。「回復」「緩やかに回復」などは北海道、東北、四国の3地域。
前回調査との比較では、判断引き上げが四国、九州・沖縄の2地域。北海道は前回の「回復している」から「緩やかに回復している」に引き下げた。その他の6地域は横ばいだった。
需要項目別の「個人消費」では、「緩やかに増加」が関東甲信越、近畿、九州・沖縄。「底堅く推移」が東北。「回復」「緩やかに回復」が北海道、東海。「持ち直し」が北陸、中国、四国。
各地域の企業の主な声は次の通り。
【北海道】
「ウインタースポーツ大会の開催に伴う宿泊がみられたほか、道外の旅行代理店が主催する道東周遊ツアーが増加しており、冬季の宿泊客数は増加基調をたどっている」(釧路、宿泊)。
「インバウンド個人客の間で、カプセルホテルや複数人を相部屋とするドミトリー形式の施設など低価格ホテルの人気が高まっている」(函館、宿泊)。
【東北】
「『秋田犬』を観光資源として活用する動きが広がっており、その人気の高まりからインバウンド客の宿泊者数が増加している」(秋田、宿泊)。
【北陸】
大雪により、2月の月間宿泊者数の約2割に相当するキャンセルが発生したほか、新規予約も大きく下振れるなど、大きな影響を受けた」(金沢、宿泊)。
「食料品の仕入れ価格や人件費、重油などのコストは年々上昇しているが、当社で主力の個人旅行は、価格競争が激しいインターネット予約が中心であるため、こうしたコスト上昇分を宿泊価格に転嫁することは難しい」(金沢、旅館)。
【関東甲信越】
「春節期間中における中国人客の伸長など外国人宿泊客の増加が客室稼働率の押し上げにつながっている」(横浜、旅館)。
【東海】
「アクティブシニアの増加等から平日でも相応の客数を維持している。加えて、ビジネス需要の堅調さを受けた値上げにより、客単価も上昇」(静岡、宿泊)。
【近畿】
「訪日外国人客の増加もあって宿泊需要が旺盛な中、ホテルの客室稼働率は上昇しており、平均単価にも下げ止まりの兆しがみられている」(大阪、ホテル)。
【中国】
人手不足の深刻化から、他社動向に関係なく料金を上げざるを得ず、4月から宿泊料を500~千円ほど値上げする予定」(下関、宿泊)。
【四国】
「『アートの島』として米国・豪州で人気の高い直島では、格安航空会社の就航便数増加を背景に、アジア圏からの旅行客も増加が目立っている」(高松、宿泊)。
【九州・沖縄】
「現地旅行会社とタイアップした韓国の団体客を中心にインバウンド客の予約が好調であり、客室単価も前年を上回って推移している」(北九州、宿泊)。
「以前は、大型イベント時は正規宿泊料金でもすぐ満室となっていたが、最近は、民泊との競合の影響もあって割引しないと予約が埋まらない」(那覇、宿泊)。