日韓観光交流の今後 韓国観光公社 前 日本地域センター長兼東京支社長 鄭辰洙氏に聞く


鄭氏(22年12月末に任期を終えて帰国)

「韓国旅検定」で韓国再認識

ストーリーある旅で誘客を

 ――2022年を振り返って。

 「コロナ禍では、海外渡航に関する制限の緩和措置に向けて、日本政府や韓国政府に声掛けの往復をしていた。結果、韓国では6月8日から全ての入国者の隔離義務が免除に。8月4日からはノービザでの韓国入国が再開した。とてもうれしかった一方、日本の方にはビザ取得のため、領事館の前で並んでいただいたことは申し訳なかった。訪韓者は、20、30代の若者が多く、恋人がいる、ずっと待つ知り合いがいる、韓国の雰囲気を味わってみたいなどの理由を持つ人が多かった。ノービザ決定後は、プロモーションを推進。10月15日にはBTSが釜山で10万人規模のコンサートを行い機運は高まった。11月1日からはノービザが全面開放となった。上半期では3月に横浜、5月に東京、6月には千葉でキャンペーンを実施した。訪韓者数トップ5の地域で、韓国旅行への高い意欲や期待などから手応えを感じ取った。下半期では、ノービザ決定後に大手旅行会社などがキャンペーンなどの動きを、すぐにしてくれたことには感謝している」

 ――22年は、「ときめく韓国」をキャッチコピーにしていた。

 「約2年半の間、韓国に行けない期間は続いたが、恋人や友人に会ったり、新たな発見に出会えるときめく気持ちを持ちながら韓国を訪れてほしいことなどから、本社と話し合って決めた。ときめく韓国を通じて、これから新しい韓国旅行の楽しみ方を提案できた」

 ――今後、韓国観光公社(KTO)として売り出していきたいテーマは。

 「食べ物、伝統市場、ビューティー、公演などは引き続き力を入れていく。これからは、富裕層向けのウェルネス観光を展開していく。自然やユニークべニューの中で行う癒やし体験、韓医学に基づいた韓方などをアピールしていきたい」

 ――公演観光には力を入れていた。

 「K―POPに続く、『Kミュージカル』などの名で売り出したかったが、コロナの影響を受けた。好きな俳優が眼前でセリフを言い、踊り、カーテンコールの際には歌って応えるなど、魅力あふれるものだ。また、日本語字幕があるほか、女性層が95%と高いなど、女性1人からでも気軽に劇場に訪れられる。ソウルの演劇街『大学路』などでぜひ楽しんでもらいたい」

 ――韓国渡航の現状について。

 「10月には、約6万8千人が韓国を訪れた。コロナ前と比べると回復はまだまだだが、韓国ドラマ『愛の不時着』『梨泰院クラス』を見た人や、美容やグルメを韓国の本場で味わいたいという人からのニーズは高く、日ごろから東京・新大久保で韓国文化を楽しむ20、30代の女性層や、ネットで情報を得て予約する層からの予約は増えている」

 ――日韓観光の現状、そして今後をどう捉えているか。

 「23年2、3月には航空便が増え、19年の78%までは回復するはずだ。恐らく韓国人からの戻りの方が早いことが予想されるが、その分日本人による渡韓も増える。3月は卒業旅行シーズンであり、旅行会社とも協力しながらキャンペーンを展開していきたい。韓国では、約3年間日本食を食べられずに禁断症状が出るなど、若者から年配まで多くの人が日本に行きたがっている。円安の影響もあるが、韓国人はもともと海外旅行が好きで、今はシンガポール、ベトナムなど行く場所も限られている。コロナ前の双方向交流1千万人には、早ければ24年、遅くとも大阪・関西万博がある25年には戻るはずだ」

 ――東京支社長を丸4年務めた。

 「福岡2回、東京2回の赴任で、今回の4年を含めて計12年になる。今回の4年で印象に残っているのは、東京支社50周年のイベントを開けたこと。日ごろから協力いただいている旅行会社や観光関係者に改めて感謝を言いたい。事業では、『韓国旅検定』を広く展開できたこと。会員数は約2万5千人まで増え、多くの人が韓国に関心を持ち、行きたい気持ちでいっぱいであることを再認識した。12月8日からは、100人が2泊3日で韓国に行き、『韓国旅検定感謝祭inソウル』を開催した。これは続くものであり、皆さまにも韓国を知るきかっけ、より詳しく知るものとして参加してもらいたい」

 ――これまでで、日本で良かった場所は。

 「和歌山の白浜は薦めたい。想像以上に暖かく、温泉があり、海水浴、ゴルフもできる。食では韓国人が好むクエや太刀魚も食べられるなど、韓国人が好む全てが詰まった場所といえる。和歌山には、文禄・慶長の役の際、朝鮮軍に火縄銃の技術を伝えた武将である沙也可の歴史があるが、日本の各地域は韓国とその地域をつなぐストーリーを紹介できれば、より韓国人の興味関心を引くことにつながるだろう」

 

ジョン・ジンス氏=2019年1月から韓国観光公社(KTO)東京支社長に就任、2022年から日本地域センター長兼東京支社長に就任。22年12月末に任期を終えて帰国。
【聞き手・長木利通】

 
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