東京の谷中にある客室数12室の小さな日本旅館。廃業寸前まで追い込まれて外国人客の受け入れを決断し、この25年間は宿泊客の9割が外国人客で客室稼働率は90%を超えている──。観光業界に身を置く人なら、これだけ聞けば、澤の屋旅館のことだと大半の人がピンとくるだろう。
澤の屋旅館の軌跡は、これまで数多くのメディアで紹介され、館主の澤功氏も自著や講演などで語っている。同書は、改めて取材し、マーケティングの視点も加え、それを詳細に解説。外国人客たちの行動も分析し、澤の屋旅館の秘密を解き明かそうとしている。
観光カリスマや「Yokoso! JAPAN大使」としても活躍する澤氏はこう主張する。「小さな澤の屋旅館でも外国人旅行者の受け入れはできた。もっと外国人旅行者に満足してもらえる日本旅館が全国にはたくさんあるのに、外国人旅行者を拒み続けるのは日本にとって損失だ」。
国として訪日外国人旅行者の増大を図るビジット・ジャパン・キャンペーンを推進している。外国人客の受け入れとは何か、澤の屋旅館からその本質が見えてくる。
発行=彩流社。定価は2千円(税別)。