日本政策投資銀行東北支店と東北観光推進機構はこのほど、東北(新潟県を含む7県)の旅館・ホテルを対象に実施した訪日外国人旅行者の受け入れ環境に関する調査の結果を発表した。外国人が宿泊客に占める割合が5%未満の施設は、全体の約8割に上ることが分かった。今後の受け入れには約9割の施設が肯定的な意向を示しているものの、外国語対応や人材育成には関係機関の支援を期待する声が多いことも明らかになった。
調査は昨年9~11月に実施。同機構の会員旅館・ホテルなど517軒の回答を集計。施設タイプ別では回答施設のうち旅館が56・7%。客室数別では50室以上の施設が全体の53・4%を占めた。
外国人受入比率の回答は、「受け入れなし」が6・0%、「1%未満」が35・8%、「1~2%未満」が22・4%、「2~5%未満」が19・3%となり、5%未満の合計が83・5%に上った。
外国人受入比率5%未満の割合は、施設タイプ別で旅館が86・3%、ビジネスホテルが84・7%、シティホテルが80・3%、リゾートホテルが73・6%となった。県別では福島県が92・8%、他県は80%台前半だった。
外国人客の収益性の観点から聞いた「外国人客の経営指標への貢献」に関する質問では、「貢献していない」「ほとんど貢献していない」の合計が52・1%、「大きく貢献している」「ある程度貢献している」の合計が42・0%だった。
外国人客が多い月の上位は(1)10月(2)4月(3)2月―の順で、紅葉、桜、雪のシーズンに訪問が多い。ただ、山形県と新潟県は、トップシーズンが2月で全体の傾向とは異なる結果だった。
外国人客の予約経路では、宿泊予約サイトが42・8%、旅行会社が34・6%、自社ホームページ(HP)が6・4%、自社HP以外の直接予約が5・6%だった。
旅館・ホテルが考える外国人客への訴求ポイントは、(1)インターネット、Wi―Fiなど通信環境の整備(56・8%)(2)日本料理、地元の酒などの充実(43・2%)(3)観光施設へのアクセス(37・4%)―などが上位。他方で政投銀の他の調査結果によると、外国人客が宿泊施設に求めるものは、宿泊施設の上位回答以外にも、「日本文化の体験」「宿泊施設以外での夕食の選択」「英語対応」などが上位で、食い違いが見られた。
旅館・ホテルの今後の外国人客の受け入れ方針では、「積極的に受け入れていきたい」が35・4%、「自然体で受け入れていきたい」が56・3%。受け入れ環境の整備に希望する支援策では、「外国語コールセンターの設置など、語学面での支援」「外国人対応が可能な人材育成面での支援」「Wi―Fi整備や多言語表示対応に向けた補助金制度」などが上位だった。
7日には仙台市内で調査結果の説明会が開かれた。調査結果を踏まえた東北のインバウンド振興について、政投銀東北支店は「同一の課題を有する施設間の連携強化や、Wi―Fi整備の補助金制度などの支援策が必要」と指摘。東北観光推進機構は「オール東北でプロモーションの強化に取り組む」と強調した。