震災10年、異例の半年開催
6テーマに200の特別企画
JRグループ6社と指定された自治体、地元の観光事業者などが共同で実施する大型観光企画「デスティネーションキャンペーン(DC)」が4月1日から、東北を舞台に9月末まで展開される。東日本大震災から10年という節目に合わせ、開催期間は従来(3カ月)の倍、6カ月に及ぶ。新型コロナウイルス禍という逆風が吹く中、どう成果を上げるのか。観光の持つ力が試される。
東日本大震災による死者・行方不明者は2万2千人を超え、約3万6千人がいまだ避難生活を続けている。10年の月日が流れたとはいえ、いまだ復興途上というのが実情ではないか。
2月中旬に福島沖で、3月20日には宮城県沖で強い地震があり、宮城県沖の地震では津波警報も発表された。いずれも東日本大震災の余震とみられるが、頻繁に続くと客足に影響を及ぼしかねない。コロナ禍とも相まって、東北DCを取り巻く環境は厳しいものがある。
6県などでつくる東北DC推進協議会とJRグループは16日、仙台市のメトロポリタンホテル仙台で記者会見し、DCの概要を発表した。会見には推進協の小縣方樹会長(東北観光推進機構特別顧問)とJR東日本の深澤祐二社長が出席し、各県知事がビデオメッセージを寄せた。
DCは「花」「自然・絶景」「歴史・文化」「酒・食」「温泉」「復興」の六つのテーマ(24カテゴリー)で各県のコンテンツをつなぎ、東北全体の魅力を創出する。期間中に実施する特別企画は約200となる。
例えば、ONSEN・ガストロノミーウオーキングが初めて東北6県で開催されるほか、福島県会津若松市の鶴ケ城では、城をバックにランタンを飛ばすイベントなどが予定されている。
周遊列車や100本以上の観光列車が運行。特別企画として、豪華寝台列車「トランスイート四季島」が初めて仙台発着で運行される。
小縣会長は「コロナ禍で誘客効果は見通せないが、復興を遂げている東北の姿を皆さんに見ていただくという面では大変意義は大きい」と述べ、深澤社長は「この期間を利用し、レガシーとなるような新しいDCを創造する。リアルとデジタルを融合し、観光を通じた東北復興を実現したい」と強調した。
誘客目標として、6県の2019年4~9月の観光入り込み客数5832万人、延べ宿泊者数2307万人に近づけることが掲げられ、いち早く観光需要を回復させたい意向だ。
南三陸ホテル観洋(宮城県南三陸町)の女将、阿部憲子さんは「DCを最大限生かし、仲間と連携しながら『震災伝承ロード』語り部活動や『潮風トレイル』などを県境を越えてPRする。また、桜やツツジなど花の美しさや海、山の魅力的な食も伝えたい」と意気込む。
東北運輸局によると、20年の6県全体の延べ宿泊者数は約2231万人泊で、前年比35.7%減。統計を開始した07年以降、最大の下げ幅となった。外国人延べ宿泊数は約40万5千人泊、同75.9%減となっている。
東北DCの共同記者会見で6県のキャラクターとポーズをとる小縣会長(左)と深澤社長。成果が注目される