栃木県の観光関係3団体は1月25日、原発事故に伴う観光に対する風評被害の払しょくに国の支援策を要望した。旅館の女将を中心とする約30人が東京を訪れ、国土交通相、観光庁長官に要望書を提出。放射能に関する風評などの影響で宿泊客が落ち込んでいる地域の窮状を訴え、早期の需要回復に向けた対策を求めた。
要望書は、栃木県観光物産協会(小松正義会長)、栃木県旅館ホテル生活衛生同業組合(堀口眞利理事長)、観光栃木の魅力を創る女将の会(伴玉枝会長)の連名。
県内の宿泊客数は昨年のゴールデンウイーク以降、少しずつ回復しているが、年始などのトップシーズンを除くと、依然として例年の2割減。家族客の減少も目立つほか、県の北東部に位置する那須、塩原などはさらに状況が厳しいという。
要望書では、「栃木県の観光業界にとってまさに経営の危機と言うべき極めて深刻な事態が続いている。地域での対応には限界があり、国において国内外からの観光客の誘致促進を積極的に推進するなどの抜本的な対策が必要」と強調した。
国に求める具体策としては、風評被害の払しょくに向けた明確なメッセージなどの情報発信、イベントやキャンペーンなどの観光需要の喚起、外国人旅行者や国際会議の誘致などを挙げた。
小松会長、堀口理事長、伴会長、女将の会のメンバーらは、観光庁の溝畑宏長官を訪ねて要望書を手渡したほか、記者会見を開き、風評被害の現状などを訴えた。
鬼怒川温泉、花の宿松やの臼井静枝氏は「年始も3日を過ぎると静かになってしまい、苦しい経営が続いている。観光はすそ野の広い産業で、風評被害が県内経済全体に深刻な影響を及ぼしている」と指摘した。
塩原温泉、彩つむぎの君島理恵氏は「ホットスポットなどの放射能関係のニュースが流れるたびに栃木県全体に問題があるかのような印象を持たれてしまう。正確に情報が伝わるよう力を貸してほしい」と訴えた。
女将の会会長を務める本家伴久旅館の伴氏も「冬の栃木には冬祭りやかまくら祭りなどのたくさんのイベントがあり、それぞれに趣向をこらしている。お客さまに足を運んでもらえるよう支援をお願いしたい」と呼びかけた。
要望活動に参加した他の参加者は次の通り(敬称略、カッコ内は旅館・ホテル名)。
日光=赤澤峰子(奥の院ほてるとく川)、増田伸枝(梅屋敷旅館)、渡辺純子(湯乃家旅館)、成瀬亜希(奥日光ゆの森)、小林慶子(かつら荘)、増田秀美(ホテル高照)▽鬼怒川・川治=奥村恵子(静寂とまごころの宿七重八重)、小野夕里(鬼怒川パークホテルズ)、高橋真由美(ホテルサンシャイン鬼怒川)、高橋美智子(同)、船曳美恵子(宿屋伝七)、阿久津恵永子(鬼怒川国際ホテル)▽塩原=関スズエ(湯の花荘)、君島香(光雲荘)、田中志(湯守田中屋)▽那須=廣川登美子(松川屋那須高原ホテル)、広川美知子(中藤屋)、小貫トヨ(自在荘)▽黒磯=加藤のぶ子(源泉ほたるのゆ)、荻原里香(幸乃湯温泉)、室井節子(一井旅館)、室井美華子(心のやど江戸や)、白石多恵子(山本荘)▽宇都宮=福田泰子(ホテル丸治)
観光庁の溝畑長官を訪問した栃木県の観光関係者