
スーパーホテル執行役員経営品質本部長 星山 英子氏
CO2実質ゼロ泊・エコひいき ぐっすり眠れなければ返金
――スーパーホテルはSDGsへの取り組みが進んでいるホテルとして有名ですね。
「スーパーホテルは、『Natural、Organic、Smart』をコンセプトに、健康でサステナブルなライフスタイルを提案するホテルとして国内173店舗、海外1店舗(ミャンマー)を運営。先進的・独自的で、業界をリードする環境保全の取り組みを行っている企業を、環境大臣が環境先進企業として認定する『エコ・ファースト制度』で、ホテル業界で唯一認定を受けている。環境保全活動以外にも地域活性化や次世代支援などのSDGs活動に積極的に取り組んでいる」
――エコ・ファースト企業として具体的に取り組んでいることは。
「『スーパーホテル三つの約束』として(1)脱炭素社会実現のために、事業活動におけるCO2排出量を削減する(2)自然との共生実現のために、生物多様性の保全に向けた活動に取り組む(3)社員一人一人が環境意識向上に努め、お客さまを巻き込んだ環境保全活動に取り組む―を掲げている」
「(1)では、2010年から、公式サイト予約の宿泊に対して、宿泊時に発生するCO2総排出量100%をカーボン・オフセットする取り組みを開始。2024年10月から再エネ由来の電力導入を推進し、全ての予約を対象とした『CO2実質ゼロ泊』を導入。ビジネスや観光におけるエコ旅行を推進している。また、連泊時に清掃を行わない活動『エコひいき』で、1回の客室清掃で必要な水7リットル、リネン洗濯における水14リットル(CO2排出量0・07キログラム)の削減を推進している」
「(2)では全店の朝食に、オーガニック野菜、特別栽培米、有機・特別栽培食材等の環境配慮農産物を積極的に導入。国産木材をホテル内の備品や内装などに積極的に活用し、林業やそれに携わる地域創生に貢献する努力を続けている」
「(3)では、社員の環境意識向上に努め、eco検定(環境社会検定試験)取得を推進し、全社員合格を目指している。現在の取得率は90・07%だ。また、お客さま一人一人にフロントで『CO2実質ゼロ泊』『エコひいき』の案内を積極的に実施し、環境負荷低減の啓発活動を推進している」
――「サステナホテル」というビジョンを打ち出されている。
「気候変動や持続可能な地域づくりなどの世界的な課題に対し、これまで以上に積極的に取り組んでいくという私たちの決意表明を込めたキーワードが『サステナホテル』だ。ウェルネス(ぐっすりにこだわるホテル)、サステナビリティ(地球と地域にやさしいホテル)、ホスピタリティ(日常の感動のおもてなしを極めるホテル)を目指している」
「当ホテルは創業当初から、お客さまが『ぐっすり眠れる』睡眠環境づくりに特にこだわってきた。2004年に大阪府立大学名誉教授の清水教永医学博士と共同で『ぐっすり研究所』を設立。睡眠を科学的に研究した結果、寝具や寝室環境が睡眠の改善に役立つことが分かった。この研究結果を踏まえて、健康イオン水や8種類の枕、天然温泉、客室天井への珪藻土(けいそうど)の活用などの取り組みを展開してきた。宿泊時にぐっすり眠れなければ宿泊料金を返金する業界初の『品質保証』も実施している」
「天然ヒノキアロマのデフューザーをフロントロビーや温泉大浴場などに設置。清々しい香りで、疲れやストレスを癒やし、心身ともにリフレッシュしていただくことで『ぐっすり』につなげる取り組みも行っている」
「ぐっすりお休みいただいた後は、元気に一日をスタートしていただきたいという思いからオリジナル朝食メニュー『健康増進シリーズ』の提供も開始。新陳代謝を促してデトックス効果も期待できる『健康増進カレー』を23年6月から、しびれる辛味が交感神経を刺激して目覚めをすっきりとさせる『大豆ミート100%四川風麻婆豆腐』を24年3月からご提供している」
ほしやま・えいこ氏 1998年にスーパーホテルにフロントスタッフとして入社。2008年に研修センターの支配人として人財育成を担当した後、2010年に経営品質部に配属となり、全国のフロントスタッフの教育制度やトレーニングに従事。2022年から経営品質本部本部長として、顧客満足向上・ブランディング・デジタルマーケティング・SDGsの推進に取り組んでいる。
【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】