日本政府観光局(JNTO)は6月19~29日、欧米豪の富裕層旅行を取り扱う海外の旅行会社53社を日本に招請した。各地を巡る視察旅行を10コースで実施。日本の観光事業者など57企業・団体との合同商談会も開催した。地方への誘客、旅行消費の拡大に向けて、富裕層の訪日観光需要の喚起につなげたい考えだ。
ターゲットに位置づけた市場は、豪州、米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、スペインの9カ国。これらの市場で富裕層向けの旅行を造成している旅行会社をJNTO海外事務所で選定し、担当者を日本に招待した。
視察旅行のコースは、プロモーション方針に沿った地域を選定。東京や京都のほか、豪州には瀬戸内、米国には瀬戸内や九州、英国には沖縄、フランスには香川、ドイツには和歌山・三重、ロシアには石川・岐阜などを紹介した。
旅程の作成にあたっては、欧米豪を対象とした富裕層誘致に取り組む自治体の連携組織「日本ラグジュアリートラベルアライアンス」(札幌市、石川県、高山市、京都府、京都市、奈良市、和歌山県)からアドバイスを受けた。
商談会は6月27日、東京都文京区のホテル椿山荘東京で開催した。セラー側となる日本の参加者は、ホテル、旅館、観光施設、鉄道、旅行会社などのインバウンド担当者。スケジュール表に定めた商談を約4時間にわたって行った。
JNTO海外プロモーション部欧米豪グループの門脇啓太マネージャー代理は「日本国内のインバウンド関係者の間には、欧米豪の富裕層旅行に関する商談の機会を設けてほしいという気運が高まっていた。今回は、商談でしっかり売り込める具体的な施設や体験プログラムなどのコンテンツを持った事業者を中心に参加してもらった」と話す。
商談会に参加した日本側セラーの1社、JR九州鉄道事業本部クルーズトレイン本部の中川久美セールスプロモーション担当課長は、豪華寝台列車「ななつ星in九州」を利用した九州旅行を売り込んだ。「九州の魅力をPRするとともに、『ななつ星』の旅ならではの体験として、例えば、有田焼の名窯元を当主の案内で見学できるといった特別感を訴えた。九州に足を運んでもらえるように地元と一緒に取り組んでいく」と話した。
富裕層旅行者の誘致について政府は、中長期の観光施策の構想「明日の日本を支える観光ビジョン」(昨年3月決定)の中で、「欧米豪を中心とする富裕層をターゲットとして、旅行先としての日本のブランドイメージを確立する」と掲げている。
具体的には、富裕層を対象とする旅行会社やメディアを日本各地に年間100人招請し、ストーリー性のある日本の伝統、文化を発信するとともに、ツアーの造成を促進する。旅行会社、メディア以外にも、有力なオピニオンリーダーなどに特別な日本体験をしてもらい、その映像を海外に発信していく。