
日本銀行は次年度(2025年度)の考査で、段階的な利上げ局面を踏まえた信用・市場リスクの管理体制を重点的に点検する。地域銀行や信用金庫の「注力分野」として取り組みを加速する不動産関連融資や越境貸出では、入口審査・中間管理姿勢をヒアリング。継続的な金利上昇で含み損債券などを抱える有価証券運用に関しては、損失限度枠管理の実効性やリスク許容度の把握状況を前年度より踏み込んで確認する。3月11日に公表の考査実施方針で明らかにした。
25年度考査では、市場金利上昇を受けたリスク管理状況や、人口減少・少子高齢化に直面する地域経済を念頭に置いたビジネスモデルの持続可能性について対話を深める。【記事提供:ニッキン】
信用リスクに関しては、増勢が続く不動産関連融資やストラクチャードファイナンス(ストファイ)、越境貸出の管理体制を重点的に確認。なかでも、「(不動産)分譲販売・売買業向け」では、プロジェクトの検証や物件評価額、販売の進捗管理といった予兆管理手法を丹念にみていく。
アパートローンに代表される「居住用賃貸業向け」では、賃料・空室率を含めた収支計画や回収可能性などを点検。ストファイや越境貸出に傾注する先に対しては、貸出形態や債務者特性を踏まえた審査・管理の適切性を検証。短期金利を参照する契約が多いLBOローンでは、段階的な利上げで生じる利払い負担増への耐性もみていく。
市場リスクでは、マーケットが織り込む金利見通しを踏まえた収益見通しや、預貸金・有価証券運用のALM(資産・負債の総合管理)運営を点検。財務ポートフォリオや金融環境の変化を受けた預金・貸出金の市場金利追随率などについて、定量的な分析も含めて確認し、対応策をヒアリングする。
流動性リスクについては、預金減少先を中心に、その動向分析の深さや対応方針を検証。オンラインバンキングを通じた預金流出リスクもみていく。
今年度(24年度)に実施した考査(銀行・信用金庫など68先)では、リスク管理が不十分な先が散見された。信用リスクに関しては、顧客情報の取得に制約がありがちな越境貸出・非メイン先が突発破綻して大口の信用コストが生じるなど中間管理において課題がみられた。
市場リスクに関しても、過去や足元の利上げ局面における自行庫の市場金利追随率を把握していなかったり、損失限度額(ロスカット)の設定基準が経営体力やリスク許容度と整合性が取れていないケースがあった。
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