観光庁などの関係省庁は、6月15日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)の施行要領(ガイドライン)を策定した。適正な運用の指針とするため、民泊新法の解釈、留意事項などを示している。都道府県などの制限条例の考え方(既報)以外について主なポイントを紹介する。
住宅の定義
住宅宿泊事業を営める住宅は、(1)現に人の生活の本拠として使用されている家屋(2)入居者の募集が行われている家屋(3)随時その所有者、賃借人、または転借人の居住の用に供されている家屋―。
「入居者の募集が行われている家屋」は、広告に不利な取引条件を事実に反して記載するなど入居者募集の意図がないことが明らかな場合は該当しない。「随時その所有者、賃借人、または転借人の居住の用に供されている家屋」は、別荘、セカンドハウス、将来的に居住する空き家、別宅として使用する古民家などが含まれる。居住と言える使用履歴がない民泊専用の新築投資マンションは該当しない。
事業の定義
住宅宿泊事業は、宿泊料を受けて届け出住宅に人を宿泊させた日数が年間で180日を超えないもの。日数の算定は、宿泊者を募集した日数ではなく、実際に人を宿泊させた日数で算定する。
届け出関連
都道府県知事などは、宿泊者、近隣住民などが住宅宿泊事業の届け出の有無を確認できるようにするため、届け出番号、住所を公表することが望ましい。なお、個人情報保護条例などとの整合、プライバシーへの配慮なども踏まえて具体的な公表方法を検討することが望ましい。
添付書類
都道府県知事などは、届け出住宅が消防法令に適合していることを担保するため、消防法令適合通知書を届け出時に併せて提出することを求めるものとする。
安全の確保
具体的な非常用照明器具の設置方法、その他宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置は、国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則第1条第1号および第3号ならびに平成29年国土交通省告示第1109号に規定しており、届け出住宅の建て方や規模などに応じた安全措置の適用については表1の通りとする。
宿泊者名簿
宿泊者名簿の正確な記載を確保するための措置として、宿泊行為の開始までに、宿泊者それぞれについて本人確認を行う必要がある。外国人宿泊者に関しては、旅券の写しを保存する。
本人確認は対面または対面と同等の手段とし、次のすべてを満たすICT(情報通信技術)を活用したテレビ電話やタブレット端末などの方法などによって行われる必要がある。(1)宿泊者の顔、旅券が画像で鮮明に確認できること(2)当該画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所など、届け出住宅内または届け出住宅の近傍から発信されていることが確認できること。
長期滞在者に対しては、本人確認を行っていない者が宿泊することがないよう、定期的な清掃などの際に、不審者が滞在していないか、滞在者が所在不明になっていないか、などを確認することが望ましい。特に宿泊契約が7日以上の場合、定期的な面会などで確認を行う必要がある。
苦情対応
周辺地域の住民からの苦情などは、深夜早朝を問わず、常時、応対または電話で対応する必要がある。宿泊者の行為で苦情が発生し、注意しても改善されない場合、現場に急行して退室を求めるなど、必要な対応を講じることとする。
標識の掲示
届け出住宅ごとに公衆の見やすい場所に指定の様式の標識を掲げる必要がある。届け出住宅の門扉、玄関などのおおむね地上1・2メートル以上1・8メートル以下で認識しやすい位置に提示することが望ましい。共同住宅の場合、個別の住戸に加え、共用エントランス、集合ポストなどに簡素な標識を掲示することが望ましい。
管理業
家主が不在の届け出住宅などの管理は、国土交通相の登録を受けた住宅宿泊管理業者に委託する必要がある。管理業者は、宿泊者との連絡、苦情対応に必要な体制を常時確保する必要があるが、旅館業法の許可を受けた施設が、管理業に登録する場合、宿泊者との連絡が常時可能な体制があるとみなすことができる。
仲介業
民泊仲介サイトなどを運営する住宅宿泊仲介業者には、虚偽の届け出番号を示す施設、旅館業の無許可営業者など、違法なサービスのあっせんを禁止する。違法な物件のサイト掲載が確認された場合、観光庁が当該物件の情報の削除を要請することがあり得る。
サイト掲載の届け出物件については、年間180日制限、条例制限との合致を補完的に確認するため、6カ月分の次の項目を毎年4月、10月の15日までに観光庁に報告することとする。(1)住宅宿泊事業者の商号名称、氏名(2)届け出住宅の住所、届け出番号(3)届け出住宅に人を宿泊させた日数。
また、マンスリーマンションについては、一時的な宿泊を主とする施設と混在させて民泊仲介サイトに表示することは適切ではないため、別サイトで管理することが望ましい。