沖縄、持続可能な世界的デスティネーションへ 沖縄総合観光政策推進室長が講演


沖縄総合事務局運輸部長・沖縄総合観光政策推進室長

地域経営には「三つの軸」が重要 沖縄にこそ日本に勝ち筋がある

 国際ホテル・レストラン・ショーの会場で16日に開かれたトレンドセミナー「心豊かで持続可能な世界的デスティネーションへ―沖縄を例に―」で、内閣府沖縄総合事務局運輸部長・沖縄総合観光政策推進室長の星明彦氏が登壇し、国家における観光産業の重要性や沖縄の現状などを語った。講演要旨は次の通り。

◇     ◇

 人口減少を迎える日本では、観光は成長戦略の柱、地域活性化の切り札だ。新たな観光立国推進基本計画では、大阪・関西万博も開催される2025年に向け、「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」をキーワードに、「持続可能な観光地域づくり」「インバウンド回復」「国内交流拡大」に戦略的に取り組み、全国津々浦々に観光の恩恵を行きわたらせることを標榜(ひょうぼう)している。

 コロナ禍を経て、世界の旅行者には持続可能性への関心や、自然・アクティビティに対する需要が高まっている。日本の観光関係者にも「持続可能な観光」への意識を高めていく必要がある。

 観光庁は2023年5月、高付加価値旅行者の誘客に向けて集中的な支援等を行うモデル観光地11地区を選定し、沖縄・奄美地区も選ばれた。

 観光地域づくりとは、訪れる者、住まう者がともに「訪問・滞在価値」、つまり「本物の体験」「学び」を創り、体現することだ。環境、経済、社会の好循環により、文化、歴史、自然、社会の持続可能性を高める地域経営をすることが求められる。「世界でそこにしかない魅力」を地域共同経営で磨き上げていく必要がある。地域金融、地域の基幹産業、観光、交通関係者等の連携によるエリア価値を高めるための地域経営戦略の立論の仕組みづくりが大事だ。

 世界から選ばれる、誇りある持続可能な観光地を進めるために必要となる地域経営の第1の軸は「来訪・滞在価値(地域ブランド)や戦略商材の世界的価値創出」、第2の軸は「ロイヤリティの向上(地域ファン創出)と経済連関・波及の拡大」、第3の軸は「地域経済循環率の向上による投資効果の改善、人材・設備に対する高サイクル投資の加速」だ。

 特に人材投資は重要。サービスの価値を生み出す源泉となるからだ。適切な対価として得た収益は地域の外部に流失させず、域内の投資循環の原資として使っていただきたい。地域の全ての基幹産業を巻き込み、これをやっていただければ必ず地域住民の方々が地域に愛着と誇りと幸せを感じてくれる。生活環境は改善され、雇用は安定し、所得も増える。そして訪れた方々が、その世界的な価値を伝えてくれるようになるだろう。観光産業には、その分配効果や波及効果を最大限に発揮することで、他の基幹産業をけん引していけるポテンシャルがある。

 沖縄の1人当たり県民所得は全国最下位。若年層の失業率も全国平均を上回っている。産業構造においては製造業の割合が極めて低い。ただ、観光とIT産業はリーディング産業として着実に成長している。1972年度に56万人だった入域観光客数は2022年度には570万人に成長、1972年度324億円だった観光収入は2021年度には2924億円となり、ともに約45年で約10倍に成長した。

 日本の原点、精神性を永く引き継いできた沖縄にこそ日本の勝ち筋がある。地域社会から永く引き継いだ精神性は、先祖、そしておじい、おばあから、寄言、教訓歌、祭祀、生活様式や伝統的な集落や風景、食、民芸などという形で、そしてたくさんの愛情や御願と共に大事に引き継がれている。あとは、地域と一人一人が持つ潜在力をただ引き出すだけだ。

 地方―地方連携で世界とつながり、地方から日本を創る時代だ。互いの得意領域、知恵、人材を重ね、前進していきましょう。

沖縄総合事務局運輸部長・沖縄総合観光政策推進室長

 

 
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