温泉保護方針でパブコメ 環境省 地熱開発促進で改定へ


掘削許可、管理の考え方示す

 環境省は20日、温泉法に関して、地熱発電の掘削許可の判断基準などを都道府県に示している指針「温泉資源の保護に関するガイドライン(地熱発電関係)」の改定案についてパブリックコメント(意見募集)を開始した。大規模な地熱開発における資源管理や掘削許可の考え方、温泉への影響などを考慮したモニタリング、地域と共に計画や運転を適宜見直す順応的管理の在り方の案を提示した。

 指針の改定案は、脱炭素社会の実現に向け、温泉資源の保護を図りながら地熱開発が促進されるよう、大規模な地熱開発に対する考え方を整理したもの。有識者会議「地域共生型の地熱利活用に向けた方策等検討会」で議論している。

 パブリックコメントは、法令や法令に基づく基準の制定、改定に当たって国民から意見を募集する仕組み。この指針改定への意見募集期間は9月3日まで。

 改定の主なポイントは次の通り。

 ▽原則として、発電規模1万キロワット以上または同一貯留層に2本以上の生産井の掘削を計画する地熱開発を「大規模な地熱開発」と位置づける。

 ▽大規模な地熱開発に当たっては、掘削許可申請の段階で、開発対象となる地熱貯留層の範囲と持続可能な熱水利用量を可能な限り科学的に推定するとともに、これに基づいた発電規模、周辺の温泉事業者への影響予測、モニタリング計画などを含む「全体計画」を事業者に策定させる。

 ▽全体計画を加味した上で掘削許可を与える場合、許可を受けた事業者において地熱貯留層単位での持続可能な利用が行われることを前提とすること。また、全体計画の範囲内での個別の掘削について、離隔距離規制や本数制限を設けないこととすべきである。

 ▽大規模な地熱開発における掘削許可の際、他の地熱貯留層や温泉帯水層との離隔距離の取り方は、坑口や熱水採取点から離隔距離を取るのではなく、開発対象の地熱貯留層において想定される外縁と、他の地熱貯留層や温泉帯水層において想定される外縁同士の位置関係を踏まえて考える。

 ▽地熱資源は、容易に把握することが困難な地下に存在し、地熱構造モデル、地熱流動流体モデル、数値シミュレーションモデルなどを用いても持続可能な活用について不確実性が残る。そのため、大規模な地熱開発を行う事業者は、広域調査段階、概査段階、精査段階などの掘削許可申請を行う前段階においても、科学的根拠に基づき地熱資源の持続可能な利用を前提とした調査計画などを策定することが望ましい。掘削許可申請の段階で策定する全体計画も含めた各段階におけるこれらの計画は、常に最新の情報を踏まえ、必要な場合に弾力的に修正されることが必要である。

 これらの計画について、自治体をはじめ地熱専門家などの有識者、温泉事業者など幅広い関係者が参画する協議会などにおいて意見交換が行われることが、地域の理解を得て計画を進める観点で望ましい。加えて、発電所運転開始以降も生産井の噴出量や温度、地熱貯留層の動態、周辺既存源泉や地表部の徴候を対象とするモニタリングを実施し、その結果を定期的に公表し、協議会などにおいて、関係者の保有するデータも合わせて意見交換を行うことにより、影響を評価しつつ、運転や全体計画を見直す「順応的管理」が行われるべきである。

 
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