源泉の適正利用を実践する旅館・ホテルなどでつくる源泉湯宿を守る会(平野富雄会長、52会員)は15、16の両日、源泉管理研修と会員同士の情報交換を目的とした源泉見学会を福島県西郷村の甲子温泉・大黒屋で開いた。参加した約20人の会員を前にセミナーを行った平野会長は、温泉のモニタリング(監視のための継続的な調査)が持続的な源泉利用に役立つことを改めて強調。「得られた泉質や温度のデータを自分で読めるよう勉強をすることも、温泉旅館の主人の役目だ」と指摘した。
大黒屋の源泉見学の前に行われたセミナーでは、現存する明治、大正期の大黒屋の温泉に関する記述をもとに過去と現在の甲子温泉を温度や含有成分などさまざまな側面から比較。同館の温泉があまり温度変化していないことや、今後温度や成分の変化があった場合に考えられる要因などについて解説した。この中で平野会長は、今年4月に環境省が出した温泉のモニタリングについてのガイドラインにも言及し、「大黒屋は100年間の温泉の変化の状況が分かっているために、現状や今後の動向を推測できる。これこそが環境省の言うモニタリングの本質。温泉の経過からその傾向を知れば、管理上の禁忌などもつかめる」と強調。源泉から出る温泉の温度や湯量を保ち続けるために、1つのデータもおろそかにせず生かすよう訴えた。
このほか見学会では、大黒屋と同じく福島県南西部に位置する会員宿の新甲子温泉・五峰荘、二岐温泉・大丸あすなろ荘、柏屋旅館を訪問=写真。会員らは源泉ポンプや風呂を前に各旅館の源泉管理の方法について説明を受けたほか、3館の源泉と大黒屋の源泉の違いについて温泉分析表をもとに学んだ。