環境省の中央環境審議会自然環境部会は3日、温泉小委員会(委員長、下村彰男・東大大学院教授)を開き、温泉法で定められている注意書きや効能などの掲示内容を見直すことを決めた。32年ぶりの見直しとなり、禁忌症から「妊娠中」の文言を削除することになった。
同省は夏頃をめどに新たな基準を都道府県知事に通知する方針。日本温泉協会は「会員に対して徹底したい」と話している。
小委は同日、「温泉法第18条第1項の規定に基づく禁忌症および入浴または飲用上の注意等の掲示について」審議した。
温泉法では温泉の効能や、温泉に入ることが健康上適さない禁忌症状などを掲示することが定められている。その基準は1982年に定められたものであり、温泉の一般的禁忌症として「妊娠中(特に初期と末期)」という項目が入っている。
根拠が不明で、同省も「これまで(禁忌症に)入っていた理由が分からない」としている。「妊娠中は体を大事にしなければならず、温泉成分によっては滑りやすいことや、足元が見えにくいこともあったので、何となく『避けるべきだ』となったのでは」との推測もある。結局、医学的な根拠がないことから削除することにした。
飲用の禁忌症について、現行基準で「泉質別」の記載としていた内容を見直し、改訂案では成分の濃度により区分けし、含有成分別禁忌症を追加した。
また、適応症の掲示基準について、療養泉の一般的適応症の中に「自律神経不安定症」や「ストレスによる諸症状(睡眠障害、うつ状態など)」を新たに追加した。ストレスの多い現代社会の実情を反映させたものといえる。
環境省の通知が出されれば、旅館などは温泉施設の脱衣所にある掲示板から削除しなければならないことになる。