東京都渋谷区の温泉施設の爆発事故を受けて、環境省は6月29日、温泉や地質などの専門家らでつくる「温泉に関する可燃性天然ガス等安全対策検討会」(座長=今橋正征・東邦大学名誉教授)を設置した。温泉利用時の安全対策の技術面、行政や事業者が実施すべき措置を中心に検討、法改正などにつなげる提言を秋までにまとめる。暫定的な安全対策は、最終報告を待たずに発表する方針。検討会では、可燃性天然ガスに関係する温泉利用時の事故例も報告された。
渋谷区内の事故は可燃性天然ガスが原因とみられるが、温泉の利用時に関して安全対策を定めた法令がないことが問題になっている。掘削に対しては、温泉法が、火災、爆発などの危険性がある場合、都道府県に許可しない権限を与えている。ただ、掘削に安全対策指導要綱を定めている東京都の例があるものの、国は詳細な技術基準を設置していない。
環境省の冨岡悟自然環境局長は「温泉の掘削時、利用時の可燃性天然ガスなどに関する安全対策をできるだけ早急にとりまとめたい。将来にわたる温泉の安全な採取、利用のため対策の方向性を示してほしい」とあいさつ。初会合には厚生労働、経済産業、国土交通、消防の関係省庁も参加した。
環境省が実施した都道府県への聴き取り調査で、温泉利用時の可燃性天然ガスの事故例4件が明らかになった。浴室内改装中の爆発(92年、北海道)▽温泉施設内の火災(96年、宮崎県)▽源泉井がある建物内のポンプ機械室で爆発(01年、北海道)▽源泉所在地のポンプ室が全焼(07年、北海道)──。92年の北海道の事故では1人がやけどを負ったが、他にけが人はなかったという。
検討会では、温泉利用時の安全対策に関し、温泉とガスを分離するガスセパレーターの設備構造、漏れたガスの検知態勢、源泉や貯蔵タンクの屋内設置のあり方などを検討する予定。温泉施設の安全対策の現状については、環境省と消防庁が、都道府県に調査を指示しており、回答を7月6日までに回収する。
座長以外の委員は次の通り。池田茂・東京都環境局自然環境部水環境課長、板垣晴彦・労働安全衛生総合研究所化学安全研究グループ上席研究員、甘露寺泰雄・中央温泉研究所所長、田中彰一・東京大学名誉教授、田村裕之・消防大学校消防研究センター火災災害調査部火災原因調査室長、平川良輝・帝石削井工業常務取締役、三田勲・日本天然ガス常務取締役=敬称略