観光経済新聞社は、旅行会社やOTAの投票によって選ばれる第38回「にっぽんの温泉100選」を決定した。1位は22年連続で草津温泉(群馬県)、2位は道後温泉(愛媛県)、3位は下呂温泉(岐阜県)となった。温泉地の優れた取り組みに贈られる実行委員会特別賞には、地域の30年先を見据えたビジョンを策定し、持続可能な温泉地の在り方に道筋を示した「道後温泉誇れるまちづくり推進協議会」(松山市)を選出した。併せて、2024年度「人気温泉旅館ホテル250選」も決定した。
第38回からオンライン投票も可能に
「にっぽんの温泉100選」は、温泉地に対する旅行者の支持、旅行会社の評価を把握するために1987年にスタートした。ランキングを通じて地元関係者の地域づくりへの意識を高揚し、全国の温泉地の活性化を促すことも目的とする。
投票は、JTBやKNT―CTホールディングス、日本旅行、東武トップツアーズなどの旅行会社、じゃらんnetや楽天トラベルといったOTAなどに協力を求めた。投票はがき、またはオンライン投票で、7月1日から10月末までの期間、投票を受け付けた。
記載不備などの投票を除外した有効投票数は2292件。内訳ははがき投票が1178件、オンライン投票が1114件だった。投票1件で最大5カ所の温泉地を記入できることから、総投票数は9203票となった。
2位道後、3位下呂
1位の草津温泉は、首都圏を中心に票を集めたとみられ、22年連続トップの位置を維持した。地域を挙げた中長期的な視点に基づくまちづくりが進められ、湯畑を中心とする景観や施設の整備が評価されたとみられる。24年度にはクラシックエリアの整備、もみじ公園の新設、バスターミナルの改修にも取り組んでいる。
2位の道後温泉は、24年7月に道後温泉本館が約5年半ぶりに全館営業を再開した話題性も投票を後押ししたとみられる。前年度の3位から2位に順位を上げた。道後温泉本館は19年1月の工事着手以降、保存修理を進めながら営業、集客するという取り組みを成功させた。
3位は下呂温泉だった。温泉の魅力に加え、充実した宿泊施設、グルメ、イベントなどへの評価が高いとみられ、トップ3圏内は5年連続となった。観光庁の「先駆的DMO」にも選定されている下呂温泉観光協会を中心とした地域づくりも全国から注目されている。
4~7位の顔ぶれ、順位は前年度と同様だった。4位が別府八湯(大分県)、5位が有馬温泉(兵庫県)、6位が登別温泉(北海道)、7位が指宿温泉(鹿児島県)。8位には、前年度の11位から順位を上げた黒川温泉(熊本県)が入った。9位は城崎温泉(兵庫県)、10位は箱根温泉(神奈川県)となった。
10位以下では、13位に能登半島地震で大きな被害を受けた和倉温泉(石川県)が入った。前年度の12位とほぼ同位置をキープした。旅行者の集客、送客がほぼできない中での上位入りは異例だが、実行委員会では、復旧・復興への応援票、災害当時の対応を評価する票が集まったとみて、投票結果のままランキングすることを決めた。
「道後温泉誇れるまちづくり推進協」が実行員会特別賞
また、実行委員会特別賞では、「道後温泉誇れるまちづくり推進協議会」を表彰する。同賞は「にっぽんの温泉100選」の30回の節目を記念して16年度から毎年度選出。持続可能な地域づくり、国内旅行・インバウンド振興などの優れた取り組みを表彰している。「道後温泉誇れるまちづくり推進協議会」は、道後温泉本館の全館営業再開に合わせる形で、「道後温泉2050」ビジョンを策定。人口減少、デジタル化、インバウンド対応などの課題を直視し、持続可能な温泉地を目指す構想を描いたことが評価された。
「人気温泉旅館ホテル250選」も決定
「人気温泉旅館ホテル250選」は、「にっぽんの温泉100選」とともに実施している旅行会社やOTAによる温泉旅館・ホテルの人気投票。一つの温泉地の中で、同じ企業が経営する宿泊施設が2軒以上、入選基準を満たした場合には全ての宿泊施設をまとめて「1選」としている。このため24年度の250選には266軒が入選した。初入選は14軒だった。
5回以上の入選を果たした旅館・ホテルには「5つ星の宿」の称号を贈っている。24年度の「5つ星の宿」は240軒。初の「5つ星の宿」入選は3軒だった。また、250選初回(1999年度)から25年間継続して入選している旅館・ホテル70軒を「プラチナ旅館・ホテル」として前年度に認定した。24年度は、新たに通算25回の入選を果たした22軒に「プラチナ旅館・ホテル」の盾を贈る予定。
「人気温泉旅館ホテル250選」においても、能登半島地震の影響で休館中の旅館・ホテルが入選した。「にっぽんの温泉100選」の和倉温泉のランキングと同様に、実行委員会での意見を踏まえ、投票結果のまま入選する取り扱いとした。
24年度の「人気温泉旅館ホテル250選」「にっぽんの温泉100選」認定証授与式・表彰式は25年1月15日に東京都台東区の浅草ビューホテルで開催する。
◎にっぽんの温泉100選実行委員会メンバー(順不同)
最明仁・日本観光振興協会理事長▽関豊・日本温泉協会専務理事▽青木幸裕・日本旅館協会専務理事▽原田健児・全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会事務局長▽野浪健一・日本旅行業協会国内旅行推進部長▽井上秀敏・全国旅行業協会事務局長▽▽大川戸修二・日本政府観光局地域連携部長▽後藤伸一・公益財団法人日本交通公社観光研究部主任研究員▽積田朋子・観光経済新聞社社長