景気後退に伴い雇用環境が悪化の一途をたどっているが、経済産業省は3日までに、雇用促進策の一環として、採用意欲があり、人材育成に優れた企業を紹介する資料集「雇用創出企業1400社」をまとめた。企業は旅館・ホテルを含むサービス業約570社、製造業約800社などで、1400社が今春以降に予定する求人数は計約6千人に上ると見られる。公表に際し、二階俊博経産相は「これら企業は人の重要性を認識し、人を中心に据えた経営を行うことで成長を遂げている企業」「雇用のミスマッチの解消に資することを期待している」とのコメントを寄せている。
経産省は各地の経済産業局や業界団体などの協力を得て、企業情報を集めた。今回掘り起こした1400社については、(1)採用意欲の有無(2)人材育成の特色、方針(3)従業員から見た視点──などを指標に、選定委員会の審査を経て選んだ。
旅館・ホテルも数件選ばれた。その1つ、知床第一ホテル(札幌市)は人材育成方針に「ES(職員満足)とCS(顧客満足)の好循環で、お客さま評価90点を目指す」を掲げ「OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)ではルールや決めごとを明確にさせ、必ず実行させる」としている。
新潟県新発田市のホテル清風苑のキャリアプランは、入社3年目で現場責任者となり、顧客ごとの担当者として接客の中心を担う。また、サービス職はVIP専門担当者や団体統括担当者、総合職は外販営業部やフロント統括チーフなどの道を進む。
入社2年目の女性従業員は、「お客さまのためにという熱意と活気にあふれ、社員一丸となって繁盛旅館を目指している。そんな会社で働けることにやり甲斐を感じている」と話している。
また、神戸市の中の坊(有馬グランドホテル)のキャリアプランは「社会的評価の高さにこたえることのできる接遇のプロをまず目指してもらう(5年程度)。その後、接客部門において8人程度のチーム長として部下の育成にも力を発揮してもらう」。
戸田家(鳥羽市)は資格要件として、「旅館の仕事に興味がある、人と接することが好き、笑顔に自信がある、常に前向きでやる気のある素直な人」を掲げ、大和屋本店旅館(松山市)は、「高卒以上で特別な資格は問わないが、サービスマインドを持った心美人を求めている」と言う。
経産省はこの資料集を同省やジョブカフェサポートセンターのホームページに掲載するほか、全国のハローワークや就職支援センター、工業高校などに冊子として配布する。今後は求職者が実際に職場を見学するツアーを実施したり、シンポジウムなどを開き、就業支援していく考えだ。