経済産業省は23日までに、町おこしや環境問題、少子高齢化対策などに取り組み、収益を確保する「ソーシャルビジネス」を支援するため、先進的な事例を集めて55選として公表した。このうち、「街づくり、観光、農業体験などの分野で地域活性化のための人づくり・仕組みづくりに取り組むもの」として25事例を選んだ。
同省はソーシャルビジネスについて、「社会的・地域的課題の解決とビジネスを両立させることで、結果的に地域の活性化や継続的な雇用創出につながる」(地域経済産業グループ立地環境整備課)と期待する。
ソーシャルビジネスは07年度で8千事業者が手がけ、市場規模は2400億円、雇用者数は3万2千人となっている。同省は知名度、認知度が高まれば市場規模はさらに拡大し、雇用者数も増えると見ている。
今回、全国からソーシャルビジネスの手本となるような事業を公募し、107事業者から応募があった。設立の動機や理念、事業の継続・発展性などを審査し、55事例を選んだ。
街づくり、観光分野ではNPO法人島の風(沖縄県島尻郡、従業員数21人)の取り組みが選ばれた。伊是名島に点在する空き家になった古民家を地元の若者とともに再生し、観光資源として活用する「古民家再生事業」が評価された。
「従来の商品提供型観光から、美しい島を残し、守り、伝える運動提案型観光を目指し、住民自ら運営するコミュニティツーリズムを推進している」(同)という。
また、徳島県上勝町の会社、いろどりは高齢者を中心とした農家が、葉っぱや草花を料亭や旅館・ホテルで使われる料理の“つまもの”として出荷する事業を行う。現在では約180戸の農家が参加し、年商2億5千万円を売り上げるまでに成長している。このほか、廃校を利用した農業体験など様々な取り組みが選ばれている。
支援強化へロゴマーク
経済産業省は17日、ソーシャルビジネスの支援を強化するため、ロゴマークを作成した。ソーシャルビジネス関係のイベントや資料などで広く活用し、ビジネスへの理解を深めてもらう。
シンボルマークは人々をジグソーパズルのピースに見立て、それらがつながり組み合わさって、社会的課題を解決していく様子を表現した。
また、3月19日には東京都内で全国フォーラムを開く。二階俊博経産相が出席し、55選事業者への贈呈式を行う予定。講演やトークセッションのほか、ソーシャルビジネス推進に向けた「日本ソーシャルビジネス宣言」も発信する。