ANAでは新サービス主導 新PMSは海外進出を視野
――2024年6月に新社長に就任されましたね。簡単なご経歴と抱負を。
「前職は全日空。本社で長くマーケティングを担当していた。マイレージプログラムの設計、ANAホテルズとIHGグループとの提携、楽天トラベル・じゃらんとのダイナミックパッケージ開発、空港チェックインシステムの簡素化(Skipサービス)などCX(顧客体験)の推進、等を担当した。タップ入社前はAIRDOに執行役員マーケティング本部長として出向していた」
「6月にバトンを引き継ぎ、身が引き締まる思いで日々取り組んでいる。創業37年になるタップは、今や社員約300人、海外も含めたグループでは370人を擁し、約1700軒の宿泊施設さまにご利用いただくPMS(ホテルシステム)会社に成長した。昨年、創業者の思いが詰まったTHL(タップ・ホスピタリティ・ラボ・沖縄)も完成。今後、コモディティー化が進むであろうPMS事業から、総合エンジニアリング会社に進化させ、人材不足や顧客向けのサービス強化などさまざまな課題を抱える宿泊・観光産業のお役に立てるように事業基盤を変化、強化させていきたい」
――創業者で現会長の林氏のカラーが強い会社です。「叩き上げの起業家からエリートサラリーマン出身者へのバトンタッチ」に周囲の反応はいかがですか。
「タップは林会長の宿泊業界への熱い思いと強いリーダーシップで成長してきた会社だ。そこが長所であり、これからの課題だとも思っている。社内外から『タップはどう変化するのだろう?』と期待と不安の両面で見られているのは日々肌で感じている。私は会長と同じ指揮はできないし、企業は持続性と共に変化も求められるので、大企業の文化で育った私らしく、まずはお客さま目線に立って、求められるサービスを確実に具現化できるよう、大きくなったタップを組織として引っ張れるように頑張りたい。タップは20代、30代の若手社員も多い。彼らと積極的に関わり、ファウンダーの思いも受け継ぎながら、彼らの力と可能性を引き出せるリーダーシップを発揮したい」
――昨年6月のTHL新設を機に、「ホテル・旅館向けの国内最大PMSベンダー」から「ホテル・旅館専門の総合エンジニアリング会社」へと大きくかじを切られましたね。
「さらに今年6月に社長を拝命した段階で、新たにDX推進本部を立ち上げ、エンジニアリング領域を推進する体制を強化した。私自身は、航空会社のマーケティング部門でさまざまな新サービス導入を主導してきたが、宿泊業界においても、サービスのセルフ化やそれに伴う人材活用の見直し、ダイレクトマーケティングや顧客基盤強化などがこれから必ず求められる。AIの活用やSDGsへの対応、フードテック、災害時におけるラストリゾートとしての役割なども課題。そういたテーマや課題を着実に付加価値のあるサービスとしてお客さまに提供できる事業に発展させたい」
――グローバルブランドホテルの出店攻勢とグローバルブランドホテルへのリブランドが進んでいます。
「インバウンド需要が増加する中、特に集客やマーケティングの観点から、グローバルブランドホテルが増加する傾向は今後も続くと思う。国内宿泊施設における当社のPMSシェアは20%弱と限定的で、マーケットを取り込む余地はまだあると思っているし、単なるPMS領域だけで勝負するつもりはない。付加価値による差別化でシェアや売り上げを伸ばしていけると確信している。また、今後は日系ホテルの海外進出を支える基盤にもなりたいと考えている」
――今後の展開は。
「タップ社員は欧米系を中心に21名の外国人スタッフが本社で働いており、新PMS開発の中心を担っている。またベトナムや中国にも子会社や関連会社の開発拠点を持っており、これらを合わせるとグループ社員の約25%を外国人が占めている。これらは海外進出を意識した展開であり、特に新PMSは英語ベースの開発を進めている。もちろん日本語に画面変換ができるシステムだ。事業成長に向けて、今後は積極的に海外事業も展開していく」
【聞き手・kankokeizai.com編集長 江口英一】
タップ代表取締役社長 吉田亮一氏
よしだ・りょういち 1990年、同志社大学経済学部を卒業し、全日空入社、大阪支店国内販売部配属、現場で営業を担当。97年本社に異動し、営業本部、社長室、マーケティング室、グループ事業推進室、CX推進室でマイレージ施策、国際線ダイヤ、ダイナミックパッケージ、レベニューマネジメントなどを担当。2022年4月、AIRDOに執行役員マーケティング本部長として出向。23年5月タップに入社。経営管理本部取締役本部長、代表取締役専務を経て24年6月、代表取締役に就任。