3月25日発生した能登半島地震は、観光業に大きな影響を及ぼしている。石川県の七尾市や輪島市の宿泊施設では、建物への被害や安全確認のため一部施設が休業、しかし、多くの施設は営業中だ。休業中の施設も大半が5月の大型連休に向けて営業再開を目指し、復旧を急いでいる。観光地や宿泊施設、旅行会社では、風評被害によるキャンセルを抑えようと、最新情報の発信に努めている。国土交通省は、関係機関や旅行会社に対し、正確な情報の収集と提供を呼びかけた。
観光地
七尾市の和倉温泉旅館協同組合によると、会員旅館27軒のうち、発生直後は半数以上が休業したが、4月4日現在、21軒が営業している。施設への被害や安全確認のため、6軒が休業しているが、6軒とも大型連休の始まる4月28日までに営業再開の予定。
また、輪島市観光課のまとめによると、輪島市内の宿泊施設は3日午前10時現在、73軒のうち50軒が営業中。23軒が休業中で、うち5軒は4月中旬までに営業を再開する予定。
和倉温泉旅館協同組合では「会員旅館からは営業状況の最新情報を収集し、お客さまからの問い合わせに対応するとともに、ホームページなどで案内している。正確な情報提供に努め、風評被害を最小限に抑えていきたい」と情報発信に苦心している。
輪島市観光課も、宿泊・観光施設、交通機関などの最新情報をホームページで提供している。
旅館
営業中の旅館でも宿泊キャンセルなどの影響が懸念される。和倉温泉のゆけむりの宿美湾荘・竹端孝雄専務は「地震発生時は宿泊客の半数がチェックアウトした後で、避難誘導はスムーズだった。けが人が出なかったのが、不幸中の幸い。客室の7割に一部被害があり、3月26日まで館内点検のため休業したが、翌27日からは営業を再開した。3、4月にそれぞれ1千人のキャンセルが出たが、5月以降の影響はなさそうだ」。
能登輪島温泉(輪島市)のホテル高州園・的場明司社長は「25日には約60人が宿泊していたが、事故もなく通常通り営業した。一部施設にひび割れなどの被害が出たが、営業に支障はない。風評被害でキャンセルが出ているのが痛い。ホームページで最新情報を流し、宿泊への影響がないことを周知したい」。
一方で、和倉温泉の加賀屋・三井則由経営企画室主任は「施設への損傷はそれほどないが、安全確認を徹底するために休業し、4月28日に営業を再開する。予約客には説明のうえ、別の日に振り替えたケースがほとんど。休業の間を館内のバリアフリー化や社員教育に生かしたい」と語り、前向きに災害を乗り切ろうという姿勢をみせた。
国土交通省
国交省北陸信越運輸局は28日、「能登半島地震による観光被害への対応について」の通達で、管内の各県、各観光協会に対し被害状況、交通アクセス情報、宿泊・観光施設の営業状況などについて最新かつ正確な情報を提供するよう要請した。
国土交通省も同日、日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)を通じて旅行会社に対し、正確な情報収集・提供に努めるよう求めた。また、外国人観光客が多い地域であることから、国際観光振興機構(JNTO)の海外事務所などを通じた海外への情報提供も指示した。
旅行会社
JTBグループは、3月26日の現地視察をふまえ、一部ツアーを除き28日からは通常催行とした。正確な現地状況を消費者に提供することを基本に、(1)旅行の延期・中止などの風評被害を最小限に止める(2)今後の能登半島地区の商品増売――といった現地支援の姿勢を打ち出している。各種媒体を通じた情報提供のほか、JTB中部を中心に今後の増売を検討している。
また、JTB協定旅館ホテル連盟、近畿日本ツーリスト協定旅館ホテル連盟などの団体では、見舞金を送る動きなどが広がっている。
気象庁は、25日午前9時42分ごろ発生した、能登半島沖の深さ11キロメートルを震源とするマグニチュード6.9の地震を「07年能登半島地震」と呼称すると発表。石川県の七尾市、輪島市、穴水町で震度6強を、石川県の志賀町、中能登町、能登町で震度6弱を観測した。
国交省北陸信越運輸局災害対策本部が2日午後3時までにまとめた能登半島地域の登録ホテル・旅館の状況は、17施設のうち12施設が通常営業中。施設の損壊は、エレベーターの一時停止、壁のひび割れ、水道管破損など16施設。人的被害は3人が軽症(全員回復)と発表している。