
暖冷房・空調の他、給湯や融雪などに地中熱を利用することで、ランニングコストや二酸化炭素排出量を大きく低減ができる理由を解説する。
住宅用のエアコンや冷蔵庫などのヒートポンプは、電気を使って圧縮機を稼働させ、空気に熱を棄てて冷房や冷却をしたり、空気から熱を奪い暖房や加熱をしたりする。ヒートポンプは、圧縮機の稼働に要するエネルギー量の数倍の熱を放ったり、もらったりすることで高い効率を得る。
電気ヒータで暖房や加温をすると、1キロワットの電気(入力)で、1キロワットの熱を生み出す(出力)。一方、ヒートポンプで温める場合は、図のように1キロワットの電気(図の「1」)を使って圧縮機を稼働させて、その数倍の熱量(図の例では「3」)を空気中からもらい、圧縮機で消費したエネルギー量も加えて暖房や加温をする。このことからヒートポンプは、電気ヒータの数倍の効率を得ることができる(図の例では「4」)。
ヒートポンプは住まいの中や身の回りにたくさんある。語彙(ごい)は耳にしたことがあるはずだが聞き流しており、頭に残っていない方が多い。
ヒートポンプの代表的なものに、冷蔵庫やエアコンがある。メーカーによっても異なるが、ドラム式の洗濯乾燥機の中で、例えばパナソニック製や日立製の洗濯乾燥機には、電気ヒータでなくヒートポンプで加熱して乾燥する機種がある。住宅用のエコキュートもヒートポンプを利用しており、日本国内の規格名称は家庭用ヒートポンプ給湯機である。
ヒートポンプは、小職が学生時代に習った教科書には、熱ポンプと記載されていた。水のポンプは、水を循環するのに使われることもあるが、元来は低い位置にある水を、高い位置にくみ上げるのに使われる。つまり位置エネルギーを高くするのが、水ポンプである。
一方、熱ポンプ(ヒートポンプ)は、低い温度のものを高い温度に昇温する装置である。ヒートポンプは低い温度のものを高くするだけでなく、温度を下げる装置もヒートポンプと呼ぶ。ヒートポンプを一言で言い表すと、「温度の高いところと低いところを作って、必要な温度をとりだす装置」(空気調和・衛生工学会「建築環境工学・建築設備工学入門」)となる。
次号で、ヒートポンプの中で、なぜ地中熱が、さらにエコなのか?などをお伝えしたい。
(国際観光施設協会エコ・小委員会委員、東北文化学園大学客員教授、元・福島大学特任教授 赤井仁志)
(2025年2月10日号掲載コラム)