脱炭素でスマートな旅館 国際観光施設協会エコ・小委員会 46 コストダウンと脱炭素の切り札・地中熱その5 ~省エネ効果48%の東京スカイツリータウン~


 温湿度や風速などの気象条件、建物用途やシステム構成、温度設置や稼働時間帯などにもより、暖冷房や給湯利用での地中熱利用のエネルギー削減効果や、ランニングコスト低減効果などが異なる。環境省や地方自治体などが発行するパンフレットや資料に、導入効果が開示されている。

 青森県は、2023年3月に「青森県地中熱普及プログラム」を公表した。この中で、化石燃料やCO2排出量の大幅な削減につながり、環境にもやさしいエネルギー源として期待して地中熱を採用した、弘前市まちなか情報センターの暖冷房と融雪の結果を示している。地中熱と従来システム(灯油ボイラ、電熱線融雪等)との主な比較は、次の通りである。

 ランニングコスト48%減▽エネルギー消費量70%減▽CO2発生量65%減 

 「青森県地中熱普及プログラム」策定の背景として、青森県庁は次のことを挙げている。温暖地では、該当しない項目もあるが、主なものを記す。
 積雪寒冷地の青森県は、冬期間の暖房や融雪等への熱需要がとりわけ高い▽1世帯当たりの灯油の年間支出金額が、青森市が全国1位となるなど、熱源としての化石燃料の使用に大きく依存している現状がある▽地中熱は年間を通していつでも、どこでも利用可能な再生可能エネルギー熱源で、冷暖房や融雪に活用すれば高いエネルギー効率で運用できる。

 民間の施設でも、環境省などの補助金を受けて地中熱を導入した事例で削減効果を公表していることがある。また、優れた建築の表彰物件の設計コンセプトやシステムなどの概要が、学協会のホームページに掲載されている。建築設備技術者協会のカーボンニュートラル賞は、25年5月の表彰が第13回目の予定で、同協会のホームページで受賞物件ごとに概要を知ることができる。過去13年間に受賞した物件データは膨大だが、タイトルにアピールポイントが記載されているので目星を付けやすい。

 旅館の暖冷房や給湯との利用形態が類似している老人ホーム(宮城県仙台市)で、地中熱による1次エネルギー削減効果の例を示す。

 空調設備43%▽給湯設備50%

 図の東京スカイツリータウンには、クローズドループ方式地中熱と地域熱供給を組み合わせたシステムが導入されている。環境省のパンフレット『地中熱読本』に、下記の効果が紹介されている。

 省エネ効果48%▽省CO2効果40%

 環境省は、地中熱に関する動画を作成公開しており、YouTubeでも見ることができる。動画は、一般向けの「知ってますか?地中熱」の他に、キッズ動画「地中熱のひみつ」もある。人はモグラやミミズではないので、土の中の現象を実際に見たり触れたりはできない。しかし、動画を見て原理や概要などが理解できる。特にキッズ動画は、お子さまやお孫さんが物理現象を理解して探求する教材にもなるはずだ。

 (国際観光施設協会エコ・小委員会委員、東北文化学園大学客員教授、元・福島大学特任教授 赤井仁志) 


図 東京スカイツリータウンの地中熱システム〔環境省パンフレット『地中熱読本』より〕


(観光経済新聞2025年3月31日号掲載コラム)

 
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