自民党観光立国調査会の文化財・社寺観光に関する小委員会(委員長、山本幸三・前地方創生担当相)はこのほど開いた会合で、社寺を活用した宿泊の現状について有識者や観光、文化両庁からヒアリングした。
冒頭あいさつした山本委員長は、参拝者のための寺院の宿泊施設、いわゆる宿坊は増加する訪日外国人旅行者などの受け入れ先になるとの認識を示し、定着に向け「応援し、活用を考えていきたい」と述べた。
この日は、寺社への観光客誘致や宣伝などを手掛ける和空(大阪市)が推進する「宿坊創生プロジェクト」について、同社の田代忍社長が説明した。
和空は近く、宿泊できる寺社をウェブで検索・予約できるサイト「テラハク」を立ち上げる。住宅宿泊事業法(民泊新法)の6月施行にあわせ、宿坊を民泊としてサイトに登録、旅行者に活用してもらう方針だ。東京海上日動火災保険と組み「テラハク保険」も作り、物損などを懸念する寺社側の不安解消にも努めるという。
田代社長によると、滋賀県大津市にある天台寺門宗の総本山、三井寺のテラハク参加が決まっている。
米エアビーアンドビーとも手を組み、宿坊の情報をエアビーのサイトに載せて集客するほか、OTAとも積極的に連携するとしている。
和空はグループ会社を通じて宿坊型のホテル運営にも乗り出しており、19年に「和空法隆寺」(奈良県)、「和空成田山」(千葉県)、20年に「和空飯山」(長野県)の開業を予定している。
ヒアリングに応じた文化庁は知恩院(京都市)や金剛三昧院(和歌山県高野町)の宿坊の事例を紹介。それによると、知恩院は和順会館で宿坊に対応。1泊1万円超で泊まれ、知恩院で毎朝行われる行事の参拝や写経体験もできる。金剛三昧院では写経や座禅体験、宿坊料理も楽しめ、1泊8千円程度で泊まれるという。
観光庁によると、恵光院(高野町)は英語解説や無料Wi―Fi設置、クレジット決済対応など外国人の受け入れ態勢が整備され、奥の院を僧侶が案内するナイトツアーや護摩行など寺院ならではの体験メニューも充実。1泊1万円ほどで、年間約1万2千人が泊まり、外国人が日本人を上回るほど人気の宿坊だ。