知ってもらいたい「経済の力」
旅行・観光にはどんな効果があるのか。日本旅行業協会(JATA)は、「旅の力」として五つの効果・効用があると提唱している。
一つは「文化の力」。いろいろな国や地域の歴史、自然、伝統、芸能、景観、生活などについて学び楽しみつつ、それらの発掘、育成、保存、振興に寄与できる。
二つ目は「交流の力」。国際あるいは地域間における相互理解、友好の促進を通じ、安全で平和な社会の実現に貢献できる。
三つ目が「経済の力」。旅行・観光産業の発展による雇用の拡大、地域や国の振興、貧困の削減、環境の整備・保全など、幅広い貢献ができる。
「健康の力」が四つ目。日常からの離脱による新たな刺激や感動、遊・快・楽・癒やしなどを通じ、からだやこころの活力を得、再創造へのエネルギーを充たす。
五つ目は「教育の力」。旅による自然や人とのふれあいを通し、異文化への理解、やさしさや思いやり、家族の絆を深めるなど、人間形成の機会を広げる。
健康の力については、JATAの文言通りではないにしろ、リラックス効果やストレス発散効果として、多くの人々が頭や体、あるいは感覚で理解している。だからこそ、多くの人が余暇があれば旅行に行きたいと考えている。
だが、五つの力のうち、経済の力については人々にどれほど理解されているのだろうか。
観光産業は、宿泊業、運輸業、旅行業だけでなく、農林水産業や飲食業などにも関連する、すそ野が広い産業だ。観光庁によると2019年の旅行消費額は29.2兆円。その生産波及効果は55.8兆円で、GDPの5.3%に相当する。また、雇用誘発効果は456万人で、全就業者数の6.6%に当たる。
「観光」は、成長戦略の柱、地方創生への切り札と位置付けられている。実際に、観光振興による交流人口の拡大で地域内の消費を増やし地方創生を実現しようとする地域は増えている。
「Go Toトラベル事業」が早ければ22年1月下旬ごろから再スタートとなる見込みだが、前回のキャンペーンでは、「なぜ、旅行会社や旅館・ホテルだけのために国の予算を投じるのか」という批判の声もあった。観光業界として、観光・旅行の経済の力をもっと国民に理解してもらうための活動を推進するべきではないか。