観光圏整備法が施行、国交省が支援エリアを募集へ


 観光地間の連携により国内外の観光客を2泊3日以上滞在させられる観光エリアの構築を支援する「観光圏の整備による観光旅客の来訪および滞在の促進に関する法律」(観光圏整備法)が7月23日に施行された。観光メニューづくりや宿泊魅力の向上など地域に期待される取り組み、観光圏整備計画の要件などを定めた基本方針も同日告示。国土交通省では今年度に補助事業などで支援する観光圏を8月初旬から募集する。

観光メニュー強化
 基本方針は、隣接する複数の市町村で構成する「観光圏」の設定について、「新たな旅行需要の創出につながる体験型・交流型観光も含め、観光旅客の具体的な動線、ニーズなどを勘案して、観光圏が中長期的に安定的で継続的なものかどうか、2泊3日以上の滞在に対応可能かどうかという観点から地域で自主的に設定する」と定めた。

 観光圏の中には、旅行者の滞在拠点として、宿泊の魅力向上に重点的に取り組む「滞在促進地区」を設定する。地区内には国際観光ホテル整備法に基づく登録旅館・ホテルをはじめとする宿泊施設が複数集積していることが必要。観光圏内には複数の滞在促進地区を設定することもできる。

 観光圏を整備するには、観光関係をはじめ地域の幅広い団体や事業者が参加する協議会での検討を経て、市町村または都道府県が観光圏整備計画を国に提出する。計画期間は5年程度とした。

 観光圏整備の具体的な事業としては、観光圏のブランドの確立、滞在型観光への転換を推進するため、地域に独自の工夫を求めているが、整備の方向性として(1)宿泊の魅力の向上(2)観光コンテンツの充実(3)移動の利便性向上(4)観光案内および観光情報の提供──といったテーマを示した。

 「観光コンテンツの充実」では、農作業体験などの参加型の観光メニューをはじめ、地域固有の食、伝統文化、景観などを生かした観光メニューの充実などを求めた。観光圏整備に利用できる農山漁村活性化法に規定された農産漁村交流促進事業の交付金の活用も検討するよう促している。

宿泊施設を支援
 観光圏整備事業での「宿泊の魅力の向上」では、滞在促進地区の宿泊事業者に、おもてなしの質的向上、泊食分離、地産地消、共通入湯券などの事例を挙げて、地域と一体になった重点的な取り組みを期待している。

 同地区内の宿泊施設の整備では、「例えば、地域文化の展示、体験・交流の場の整備、外観の統一感を創出するための外壁整備、個人・グループ客に対応した客室整備、地産食材の共同加工、泊食分離を行うための食堂・厨房の整備などの集客力向上を図るための相違工夫ある取り組みを行うこと」とした。宿泊施設のこれらの設備投資のためには、財政投融資として中小企業金融公庫から特別利率で融資が受けられる。

 また、同地区内の宿泊事業者には、旅行業法の特例措置として旅行商品の代理契約販売ができる「観光圏内限定旅行業者代理業」を認めている。特に、「地域密着型旅行商品の企画、実行を積極的に行う旅行業者(観光協会、旅館組合、NPO法人などであるものを含む)を所属旅行業者とすることが望ましい」と指摘し、着地型旅行の活性化を求めた。

 こうした観光圏整備事業で国の支援を受けるには、市町村や都道府県が国に提出する全体構想にあたる整備計画のほかに、事業を推進する関係者が実施計画を策定し、国の認定を受ける必要がある。基本方針では、その認定基準を(1)観光圏整備計画と整合していること(2)明確で検証可能な目標が設定されていること(3)滞在の促進につながる創意工夫ある効果的な取り組みと認められること──などと定めた。

 国交省では、今年度に補助事業で支援する観光圏は10数カ所と想定し、予算2億8千万円(調査費などを含む)を計上している。7月7〜14日には観光圏整備計画に関する説明会を地方公共団体や関係団体を対象に東京、福岡、大阪、札幌の4カ所で開催した。今年度に支援する観光圏の募集は8月末まで受け付けを行う予定で、9月中に選定、10月から事業をスタートさせる考えだ。

 
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