観光庁は、インバウンドによる地方鉄道の活性化策について検討を始めた。沿線人口の減少などで鉄道事業者の経営環境が厳しくなる中、訪日外国人旅行者の利用促進に向けたプロモーションや商品造成、受け入れ環境の整備、沿線の観光資源にアクセスする交通機関との連携などが課題。有識者で構成する検討会を設置し、地方の鉄道事業者の施策の立案、実行に役立つガイドラインを策定する。
有識者検討会の名称は「外国人観光旅客を対象とした地方部における鉄道利用促進に向けた検討会」。座長は、東洋大学大学院国際観光学部客員教授の丁野朗氏が務めている。
1月25日に開かれた第2回検討会は鉄道事業者からのヒアリングとして、JR九州、JR北海道、ウィラー、富士急行に取り組みを聞いた。
JR九州によると、訪日外国人向けのフリーパス「九州レールパス」の2017年度発売実績は約23万枚で09年度の約7倍。17年8月にはウェブ販売も開始し、19年春には韓国語、中国語への多言語化を予定している。
観光列車では、「ゆふいんの森」(博多―由布院・別府)はゲートウェイの博多が発着で外国人に人気が高い。他の観光列車の外国人利用には促進の余地があるという。
JR北海道の訪日外国人向けの「北海道レールパス」の発売実績は、17年度に初めて10万枚を超えた。受け入れ環境では、Wi―Fiサービスの提供を北海道新幹線、快速エアポートで順次拡大し、駅では道内50カ所で実施している。情報提供の多言語化、列車内の大型手荷物置き場の設置も順次進めている。
ウィラーのグループ会社が運行する京都丹後鉄道では、沿線エリアの観光魅力のPRに注力。外国人目線の情報をウェブサイトなどで発信している。高速バス事業を手掛けるウィラーはJR北海道などと連携し、JR釧網線の活性化にも取り組む。鉄道駅から観光資源までの交通が不便な問題などを解消するため、鉄道とバスを組み合わせた期間限定のフリーパスの造成に参加している。
富士急行は、山梨県の大月―河口湖間約27キロに富士急行線を運行。輸送人員は減少傾向にあったが、13年7月の富士山の世界遺産登録、訪日外国人旅行者の増加などを契機に回復傾向に転じた。河口湖駅の乗降人員のうち外国人は約3割に上るという。同社では、10年以降、上海、台北、バンコクに駐在員事務所を開設してプロモーション活動を展開している。
観光庁では、国内外の鉄道事業者を対象にした外国人誘客に関する調査も実施中。有識者検討会は、ヒアリングや調査結果を踏まえ、訪日外国人観光客の地方鉄道に対するニーズ、効果的な誘客に向けたマーケティングの在り方などについて議論していく。
検討会の第2回会合