観光庁はこのほど、入れ墨(タトゥー)がある訪日外国人の大浴場や温泉の利用に関する施設の対応について留意点や受け入れ事例をまとめた。一律の基準の設定は困難としながらも、入れ墨の部分を覆うシールの活用などを例示し、業界団体などを通じて各施設に工夫を促す。同時に訪日外国人にも、入れ墨に対する日本人の一般的なイメージなどを日本政府観光局(JNTO)のウェブサイトなどを通じて説明していく。
旅館・ホテル、日帰り温浴施設など受け入れ施設の留意点としては、(1)宗教、文化、ファッションなど、さまざまな理由で入れ墨をしている場合があること(2)利用者相互の理解を深める必要があること(3)入れ墨が衛生上の支障を生じるものではないこと—を挙げた。
対応事例では、(1)一定の対応を求める方法(シールなどで入れ墨の部分を覆う・衛生的な入浴着などを着用する)(2)入浴の時間帯を工夫する方法(家族連れが少ない時間帯への入浴を促す)(3)貸し切り風呂などに案内する方法(複数の浴場がある場合は指定の浴場に案内する、風呂付きの客室に案内する)—を挙げた。
観光庁は、「入れ墨のサイズが小さく(例えば、手のひらサイズ)、他の入浴者に威圧感を与えない場合は特別な対応を求めない」ことも対応事例の一つとして挙げた。
一方で訪日外国人に対する情報提供にも取り組む。「わが国においては入れ墨に対する独特なイメージがあること」「入れ墨をしている場合は、一定の対応を求められる場合があること」などを説明する。JNTOのほか、旅行会社などの協力も得て情報を発信する。
観光庁では今回の取り組みについて、警察庁や厚生労働省とも情報を共有し、地域の警察署や保健所に周知してもらっている。観光庁によると、入れ墨がある人の入浴について、厚労省は衛生上の問題が無ければ拒否などを求めていることはなく、警察庁は施設からの相談には個別に応じる方針という。
観光庁の田村明比古長官は、3月の専門紙向け会見で「訪日外国人に温泉などを楽しんでもらうこと、施設が安心して受け入れられることが課題。一律の対応を求めるのは難しいが、できるだけトラブルが少なくなるようにしたい」と語った。