観光庁は、新型インフルエンザの発生を踏まえ、観光産業の感染症に対する危機管理に指針を定める。観光への影響を最小限に抑えるため、風評被害防止策などを示したマニュアルを年内に作成し、普及を図る。25日には観光関連団体や地方自治体、危機管理の専門家、報道機関らを委員とする「観光関連産業リスクマネジメント検討会」の初会合を開き、検討を始めた。新型インフルエンザが流行段階に入る中、具体的な対策を早期に打ち出す。
今春の新型インフルエンザの発生では、関西地方を中心に旅行キャンセルが多発し、観光産業の危機管理のあり方が課題とされた。検討会で観光庁の武藤浩次長は「発生時には過剰とも言える旅行控えが生じた。対応の仕方によっては観光関連産業への影響をもう少し抑えられたのではないか」と問題を提起した。
作成するマニュアルには、発生時の情報収集、消費者やメディアへの情報発信、風評被害防止のプロモーション、関係機関の連携などに具体策を示す。国、地方自治体、観光産業など主体別の対策と、初期対応や風評被害対応のように時系列の対策をまとめる。SARS(重症急性呼吸器症候群)など過去の対処事例の分析も盛り込む。
検討会の座長には、社会へのメディアの影響などを専攻とするお茶の水女子大学大学院の坂元章教授が就任。初会合では論点として、新潟中越沖地震を経験した全国旅館生活衛生同業組合連合会の野澤幸司氏(新潟・ホテル小柳)から「風評被害はメディアの影響が大きい。報道機関への対応を重点に議論してほしい」などの意見が出た。 検討会は、秋を待たずに新型インフルエンザの患者が全国的に増加している現状を受け、対策の提示を急ぎ、9月下旬にもマニュアルの素案を示す。
リスクマネジメント検討会の初会合(25日)