旅館と地域の活性化を参加型の意見交換会などで探る研修会「旅館と地域の明日を創るフリートーキング〜旅館から地域を変える 日本を変える」が13日、山形県天童市のほほえみの宿滝の湯で開かれた。主催は観光庁。全国の旅館の若手経営者を中心として観光事業者、自治体職員など約100人が参加。旅館の生き残りに不可欠な地域の振興のために、旅館が果たすべき役割などについて話し合われた。
主催者を代表してあいさつした観光庁の加藤隆司審議官は、研修会の狙いを地域観光を担うマネージメント層の人材育成と、理論の実践と説明した上で、「旅館は地域の観光振興で中核的な役割を担っている。旅館街に活気がなくなれば、観光客は遠ざかり、外客誘致にも大きな損失。経営者には地域の観光を変えていくという意気込みを持ってほしい」と述べた。
全国から参加した若手旅館経営者16人が変革に向けたそれぞれの取り組みを発表。組織改革や情報発信の強化などの取り組みをはじめ、「地域の観光資源を活用した企画づくりが必要」「異業種間の交流を通した地域力、魅力度のアップが重要」などの意見が出た。参加者が少人数に分かれて意見交換するフリートーキングも行われた。
意見交換などを踏まえ、観光庁の初代長官を務めた首都大学東京都市環境学研究科観光科学域教授の本保芳明氏が講演。「地域と共存しなければ、旅館は生き残れない。個々の旅館が立派でも地域に客が集まらないという事例は多い。旅館経営者と地域の関係者のコミュニケーションが重要」と指摘した上で、「旅館は地域を潤し、雇用を生む。もっと観光の仕事に自信とプライドを持ってほしい」と激励した。
また、山形大学大学院理工学研究科教授の高橋孝司氏が、MOT(マネージメント・オブ・テクノロジー)専攻コースの取り組みを紹介。工学と観光を融合させる試みなど、サービスを工学として捉える意義を解説した。
変革への取り組みを発表した旅館の若手経営者は次の通り(敬称略)。
蟹御殿・荒川信康(佐賀・太良獄温泉)、ホテル八千代・井上裕士(愛媛・道後温泉)、有馬ロイヤルホテル・岩田一紀(兵庫・有馬温泉)、ホテル華の湯・菅野豊臣(福島・磐梯熱海温泉)、日本の宿古窯・佐藤太一(山形・かみのやま温泉)、つかさや旅館・庄司丈彦(山形・湯田川温泉)、いきかえりの宿瀧波・須藤宏介(山形・赤湯温泉)、寿宝園・関谷寿宣(山形・小野川温泉)、亀山温泉ホテル・鴇田英将(千葉・君津)、松泉閣花月・富井智子(新潟・越後湯沢温泉)、観山聴月・原太一郎(宮城・青根温泉)、藤龍館・星永重(福島・湯野上温泉)、月の栖熱海聚楽ホテル・森田金清(静岡・熱海温泉)、ほほえみの宿滝の湯・山口敦史(山形・天童温泉)、あぶらや燈千・湯本孝之(長野・湯田中温泉)、土佐御苑・横山公大(高知・高知市)
参加者によるフリートーキングも行われた