観光庁、通訳ガイド制度の抜本見直し視野に検討会


 通訳案内士法に基づく通訳案内士(通訳ガイド)について、制度の抜本的な見直しを視野に入れた議論が始まった。観光庁は有識者で構成する検討会を設置し、6月26日に第1回会合を開いた。通訳ガイドは登録者に対し実際の就業率が低く、地域や言語によっては人材が不足。無資格ガイドの問題もある。質の高い通訳ガイドを確保できる制度のあり方を1年間をかけて検討する。

 検討会の委員は通訳ガイド団体や旅行業団体の代表、大学教授など15人。座長には淑徳大学国際コミュニケーション学部の廻洋子教授を選出した。来年6月をめどに最終報告をまとめる。

 主な論点は、(1)質の高い通訳ガイドをいかに確保するか(試験制度や研修制度、登録更新制度の導入など)(2)無資格ガイドの問題をどう考えるか(3)語学、地域別の確保をどうするか──など。

 観光庁の調査によると、通訳ガイドの登録者は約1万3千人だが、実際の就業者は専業、兼業を合わせて約26%にとどまる。登録者の地域別分布も東京都が全体の約3割を占め、首都圏と近畿圏に集中。言語別では英語が68.5%を占め、中国語は11.4%、韓国語は4.9%に過ぎない。

 無資格ガイドの横行には、通訳ガイド団体などから「有資格者の業務を圧迫している」との声が根強い。特にアジアからの団体旅行では出発地から同行するスルーガイドが大半で、無資格も多いとされる。日本の旅行業の関与が宿泊の手配などにとどまる旅行手配の構造との関係も深い。

 また、ホテル業者など宿泊者に通訳ガイドを手配する側からは、通訳ガイドの質のばらつきを指摘する意見もある。試験や研修の制度のあり方、現制度にはない登録者の更新制なども検討テーマに挙がっている。

 観光庁では、制度の抜本的な見直しを視野に入れた検討を期待。観光資源課の水嶋智課長は「外国人旅行者2千万人時代を見据え、新たな制度を構築する必要がある。通訳ガイド制度は、資格がないと営業できない業務独占を前提にしている。そうした制度そのものの妥当性を含め、幅広い視点から議論を深めてほしい」と呼びかけた。

 
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