3年更新制導入、初回は11月まで
観光庁は、DMO(観光地域づくり法人)の全国的なレベルアップを図ろうと、DMO登録制度に関して従来の登録要領を大幅に見直し、新たにガイドライン(指針)として策定、4月15日に施行した。3年ごとの更新制や登録取り消しの規定を創設したほか、財務責任者(CFO)の設置を義務付けるなど登録要件を厳格化した。観光地域経営の視点に立ち、DMOの役割についても改めて明確化した。更新制の導入に伴い、まずは2017年11月に「日本版DMO」の第1弾として本登録した団体に20年11月までの更新登録を求める。
DMOには、地域の「稼ぐ力」を引き出し、観光地域づくりを中核的に推進することが期待される。しかし、DMOの形成、確立を巡っては、組織の目的や体制、他の団体との役割分担が不明確だったり、既存の組織からの「看板の架け替え」にとどまっていると指摘されたりと課題も見られた。
観光庁は、18年度の有識者検討会「世界水準のDMOのあり方に関する検討会」の中間報告、19年度の政府の行政事業レビュー(事業検証)での議論を踏まえてガイドライン案を策定。ガイドライン案は3月に公表され、意見公募(パブリックコメント)を経て決定、施行された。
◆更新・取り消し
日本版DMOの登録制度は15年に創設され、候補法人を含めて281団体が観光庁に登録されている。新たなガイドラインに基づいて登録、更新を行った団体は、従来の「日本版DMO」の名称ではなく、「登録DMO(登録観光地域づくり法人)」の名称を使用する。
登録DMOへの更新は3年ごと。日本版DMOの団体は、登録から3年経過時までに更新しないと、登録が取り消される。初回の更新期限は、17年11月に日本版DMOに第1弾として登録した41団体(当時)が対象となる。
候補DMOへの登録から3年が経過しても登録DMOに本登録しない団体は取り消しとなる。「日本版DMO候補法人」の団体は、登録から3年経過時に本登録が必要。初回の期限として、17年11月以前に登録したが、本登録していない団体は、20年11月までに登録DMOに本登録しなければならない。
ガイドラインに定めた登録要件を満たさない団体や、事業報告書を観光庁に提出しない団体なども取り消しの対象となる。観光庁への事業報告書は、少なくとも年1回提出する必要があり、年次決算や年次総会の終了後などに早期に提出することが求められる。
◆財務責任者
専門人材の要件では、データの集積、分析を担当するチーフ・マーケティング責任者(CMO)に加えて、新たにCFOの設置を義務付けた。CFOは、DMOの持続可能な運営に向けて、健全な運営収支や安定的な運営資金の確保に関する業務を担当する。日本版DMOの登録団体などは、次回の観光庁への事業報告書の提出の際にCFOの設置が必要となる。
CFOが担うDMOの運営資金についてガイドラインは、宿泊税や入湯税などの特定財源、負担金、会費、販売事業収益、施設管理受託収益、行政の補助金などを想定した上で、安定的かつ多様な財源の確保を目指すべきと指摘。地域の実情を踏まえて、条例による宿泊税や入湯税などの特定財源の確保が望ましいと検討を促している。
◆役割の明確化
DMOの役割も改めて明確化した。主なポイントとして、地域の合意形成に主導的な役割を果たす▽観光資源の磨き上げや受け入れ環境整備などの着地整備を最優先とする▽海外への情報発信時の日本政府観光局(JNTO)の活用など、プロモーションの戦略的な実施を徹底する―など。
「着地整備の最優先」は、観光資源の魅力向上や商品化、交通アクセス、多言語表記などの着地整備が不十分なまま、情報発信やプロモーションに偏った事業を実施し、誘客や消費の拡大に成果を上げていないDMOが見られるとの指摘を受けて、ガイドラインに盛り込まれた。
登録区分別の役割分担では、地域DMO(単独市町村が対象区域)と、地域連携DMO(複数市町村が対象区域)が着地整備に最優先で取り組み、広域連携DMO(地方ブロックが対象区域)は各地域への着地整備の働き掛け、広範囲にわたる戦略策定、マーケティングなどを担うよう求めた。
また、国は関係省庁の連携のもと、登録DMO、候補DMOに対し、体制や人材の強化、各種事業の実施などに関する支援や情報提供を行う。登録DMOのうち、インバウンド需要を取り込む意欲、潜在性の高い団体に対しては、特に重点的な支援を行う方針だ。