観光庁など、民泊条例で自治体にガイドライン


 観光庁など関係省庁は12月26日、住宅宿泊事業法(民泊新法)の運用の指針となる施行要領(ガイドライン)を地方自治体などに発出した。都道府県などが生活環境の悪化防止のため、民泊の区域、期間を制限する条例を制定する際、新法の目的や規定に反した過度な制限とならないよう十分な検証を求めた。ただ、地域の実情はさまざまなことから、考え方、イメージを明らかにしただけで、全国一律の判断基準などは示さなかった。

 6月15日に施行される民泊新法は、一定のルールの下で健全な民泊を普及するのが目的。民泊による生活環境の悪化を防止する措置として、都道府県、保健所設置市、特別区は、条例で民泊を実施する区域、期間を「合理的に必要と認められる限度」で制限できる。

 ガイドラインでは、条例制限の考え方として、「生活環境の悪化を防止する必要性は個々の区域によって異なるものであることから、住宅宿泊事業の実施の制限は各区域の実情に応じてきめ細やかに行う必要がある」としている。

 区域の設定では、住居専用地域の全域を対象とするなど、広範な区域を制限する場合、「生活環境にもたらす影響等についてきめ細やかに検討を行うなど、合理的に必要と認められる限度において、特に制限が必要である範囲で区域が設定されているかどうかについて特に十分な検証を行い、本法の目的や規定に反することがないようにする必要がある」と指摘した。

 期間の設定でも、月や曜日を特定し、年間の大半を制限する場合、「生活環境に悪影響がもたらされることが想定しがたい期間も含めて当該区域における営業が事実上できなくなるなど、合理的に必要と認められる限度を超えて過度な制限となっていないか等について特に十分な検証を」などと慎重な検討を求めた。

 過度な制限に歯止めをかけようとする半面、地域の意見を重視するようにも要請。市町村、市町村議会はもとより、地域のさまざまな意見の聴取を求めた。民泊新法の可決に際して参院国土交通委員会が採択した付帯決議の「生活環境の維持保全や地域の観光産業の育成・促進の必要性など、それぞれの地域の実情や宿泊ニーズに応じた住宅宿泊事業の制度運用が可能となるよう、十分な配慮を行うこと」も留意事項に挙げた。

 一方、ガイドラインの発出を前に、一部の自治体ではすでに条例が成立。全国初の事例となった東京都大田区では12月8日に条例が成立し、民泊を旅館・ホテルの建築が可能な用途地域のみで実施可能と定めた。東京都新宿区でも12月11日に条例が成立し、住居専用地域での月~木曜の民泊を禁止した。他の自治体でも条例制定の検討が進められている。

 12月12日には、政府の規制改革推進会議(大田弘子議長)の会合が開かれ、民泊新法が議題に。一部の委員が民泊を過度に制限する動きを懸念し、「法律が骨抜きになってしまう」「観光庁からけん制球を投げてもらわないと」とガイドラインの早期発出を求めた。

 観光庁の田村明比古長官は、12月20日の専門紙向け会見で、民泊条例の制定について「民泊新法は、住民の生活環境の悪化を防止しつつ、健全な民泊を普及させるという部分も重要だ。そのバランスが大事。自治体で検討される際には、そのあたりを丁寧にご検討いただければ」と述べた。

 ガイドラインを発出した12月26日には、民泊の制限の在り方について観光庁観光産業課の鈴木貴典課長が「地域ごとに目標とする生活環境の水準、実情はさまざまで、一律に判断基準を示して国が良い、悪いと言うのは難しい。観光庁としては個別に条例の可否を判断する立場にないが、法律の趣旨を丁寧に説明していく」との考えを示した。

 
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