観光庁の秡川長官 就任後、初の定例会見 「今の良い状況伸ばす」


観光庁の秡川長官

各地で検討が進む宿泊税導入「考えること大事」

 観光庁の秡川直也長官が7月19日、就任後初めてとなる定例会見で抱負を語った。好調なインバウンドなどを背景に、コロナ禍の時期とは大きく局面が変わったとして、現場、民間を重視して山積する課題に対応していく考えを示した。

 秡川長官は「観光庁で次長だった時はコロナ禍の後半戦で一番苦しい時期だった。お会いする業界の方たちからも苦しさが伝わってきたが、今は表情が全然違う。さまざまな課題はあるが、フェーズが変わり、アップトレンドのいいところでこのポジションをいただいた。観光は楽しい分野だ。全ては現場の皆さん、民間にある。今のいい状況を伸ばせるよう、観光庁としてしっかり取り組んでいきたい」と抱負を語った。

 今年1月に発生した能登半島地震の観光への影響に関しては、「いまだに施設の根幹に手が付かず、基本的なインフラが整っていないなど、きびしい状態がまだ残っているところがある。北陸応援割には一定の効果があったと思うが、これからも状況に応じて必要なことに取り組みたい」と述べた。

 会見では、自治体の宿泊税をめぐる動きやインバウンドの急増に伴う二重価格について記者団から質問が出た。主な内容は次のとおり。【向野 悟】

――新たな観光財源を創出するため、自治体では、宿泊税や入域料などを検討する動きが目立っている。

 「自治体が観光に熱心になって、いろいろ考えていただいているという意味ではとてもありがたい。税や賦課金などいろいろな形があると思うが、それを導入した時にお客さんへの影響がどうなるのかとか、新しい財源を得て観光地がさらに素敵になるとお客さんが増えるのではないかとか、いろいろ考えていただいていると思う。やった方がいいとか、やらない方がいいということについてはどちらでもないが、考えること自体は非常に大事なこと。どうすべきかと考えている自治体も多分多くあって、観光庁にご相談をいただくケースもあると思うが、そういう時はいろいろな事例をお伝えしたりして、ご相談にのらせていただきたい」

――観光施設や観光サービスにおいて、インバウンド客などに対する二重価格の導入が議論されている。

 「基本的にサービスに対する値段をどう決めるかというのは、企業、あるいは自治体の場合もあるが、まさに経営の大事な根幹だ。いろいろ工夫して考えていただければいい。そこを国がこうした方がいいということではない、と基本的には思っている。ただ、新しいことをやってみたいが、なかなかやりにくいというようなときに、ご相談をいただくことがあれば、他ではこういう例があるとか、こういうやり方もあるとか、ご相談にのることはあり得ると考えている」

記者会見で意気込みを問われて―。

 「私は仕事をするときは、あまり意気込まないタイプなんですね。観光の仕事、行政の仕事は、これはやっていくべきだと決めたことを成果が出るまで信じてやり続けることが大事。他の仕事もそうかもしれないけど。すぐにやり方を変えるとか、そういうことではないだろうなと個人的には思っている。良いやり方があったら変えればいいと思うんですけれども。(観光立国推進基本計画などの)方針は決まっている。すぐに成果を出すというのは、なかなか難しいと思うけれど、今、正しいアプローチで、業界も、われわれも取り組んでいる。成果が出ると思って頑張っていくということだと思います。」

秡川 直也氏(はらいかわ・なおや) 1988年4月運輸省(現・国土交通省)入省。2020年7月自動車局長、22年6月観光庁次長、23年7月内閣官房内閣審議官、24年7月1日から現職。東大法卒。神奈川県出身。59歳。

 
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