観光庁の20年度当初予算案は、19年度当初予算比2%増の680億9千万円だ。国際観光旅客税の税収(以下、観光財源)を充当する予算は、観光庁予算の中に一括計上されている。観光庁の当初予算のうち、観光財源を充当する予算を除くと、観光庁が執行する一般財源を充当した予算は170億3千万円となる。一般財源を充当した予算の主な事業は次の通りだ。
戦略的な訪日プロモーションの実施(87億2千万円、一部はMICE誘致の促進費)
日本政府観光局(JNTO)の運営費交付金として訪日外国人の誘客に充てる。JNTOの体制強化では「デジタルマーケティングセンター」を設置し、ICTを活用したマーケティングデータの集約、分析、活用を強化する。訪日プロモーションは、重点市場など市場の特性に応じて展開する。20年度当初予算のほか、19年度補正予算案には、東京オリンピック・パラリンピックを契機とした訪日プロモーション費50億円が計上された。
訪日外国人旅行者受入環境整備緊急対策事業(54億1千万円)
自治体やDMO、旅館・ホテル、交通事業者などが行う多言語での観光情報の提供、無料Wi―Fiの環境整備、キャッシュレス決済の普及、トイレの洋式化、バリアフリー化の推進などを支援する。また、持続可能な観光の確立、大規模災害など非常時の対策などで実証事業を実施する。
広域周遊観光促進のための観光地域支援事業(7億6千万円)
DMOが策定した事業計画に基づくインバウンド事業に補助金を交付する19年度からの継続事業。戦略策定、滞在コンテンツの充実、2次交通の環境整備、プロモーションなどを支援する。
観光産業の人材確保・育成事業(1億5千万円)
宿泊業の人材確保に向けて女性、シニア、就職氷河期世代などの採用、定着を図るモデル事業を実施するほか、特定技能外国人の活用に向けたセミナーや優良事例の発信を行う。また、観光産業を支える中核的な人材の育成では、社会人向けの教育プログラムを複数の大学と連携して実施する。
宿泊施設の生産性向上推進事業(6千万円)
マルチタスクの導入に向けたシンポジウム、施設間の連携による人材の共同活用などのモデル事業、生産性向上に取り組むためのガイドラインの策定などを行う。