観光庁長官「需要回復は不十分」 全国旅行支援は感染改善後


観光庁の和田長官(19日の専門紙会見で)

訪日は水際対策が課題

 新型コロナウイルスの第7波が拡大する中でも、一定のにぎわいを見せた夏の旅行シーズン。観光庁の和田浩一長官は19日の会見で、明るい兆しが見えてきた一方で、観光需要は十分に回復していないとの見方を示した。全国規模の誘客を後押しする「全国旅行支援」の実施については、感染状況の改善を条件に挙げた。

 「今年は、緊急事態宣言など行動制限がないお盆休みで、多くの観光地で昨年より多くの旅行者でにぎわったものと承知している。航空、鉄道の利用は、前年比約2倍で需要が大幅に増加したが、コロナ前との比較では6割から8割程度にとどまっている。やや明るい兆しが見えてきたと思う一方で、夏の旅行シーズンに第7波が重なったことなどの影響で、コロナ前と比べると、足元の需要が十分に回復している状況とはいえない」。

 お盆期間の旅行動向では、例えば、全日本空輸(ANA)の国内線の旅客数(8月6~16日)が127万2千人で前年比78.0%増、コロナ前の19年比25.8%減だった。JR東日本の新幹線、特急列車の利用人数(8月10~17日)は237万4千人で前年比98%増、コロナ前の18年比41%減となった。

 国の地域観光事業支援としての「県民割」(地域ブロック割)事業は実施期間が延長され、最繁忙期のお盆期間も割引の適用対象となった。観光庁の19日時点の集計によると、43道府県が地域ブロック割を実施中。他に沖縄県が県民の県内旅行に限定した県民割を実施。第7波を受けて大阪府、広島県は停止中。東京都は国の支援による事業は実施していない。

 都道府県を事業主体として全国から誘客できる「全国旅行支援」は、当初は7月前半にもスタートする予定だったが、第7波の急拡大で実施の見通しが立っていない。

 「全国旅行支援については、今後の感染状況の改善が確認できれば、速やかに実施したいと考えている。現在、感染状況を注視している」。

 国際観光も水際措置の制約などで本格的な回復には程遠い。インバウンド観光は6月10日に添乗員付きのパッケージツアーに限定して受け入れを再開したが、7月の観光目的の入国者数は7903人(法務省速報値)にとどまった。アウトバウンドも7月の出国日本人数(JNTO推計値)が27万8千人で19年同月比83%減だった。

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