会計、労働環境、ITなどに要件
指針策定で経営改善促す
観光庁は、中小規模の宿泊事業者を中心に、財務数値に基づく経営やITの活用が進んでいない状況を課題として、「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」を策定し、ガイドラインを踏まえた経営に取り組み、会計、労働環境、ITなどに関する要件を満たす宿泊施設を登録する制度を創設した。1日に登録申請の受け付けをスタート。任意の登録制度ではあるが、ガイドライン、登録を契機に経営を見直し、生産性や収益力の向上、従業員の待遇改善につなげることを期待する。登録施設に対しては、補助事業の審査で加点するなど支援策も強化する。
ガイドライン
登録制度を創設した背景には、コロナ禍に伴う売上高の減少、債務の増加など、宿泊業が置かれた厳しい経営状況がある。観光庁は、2021年11月~22年5月に有識者を委員とする「アフターコロナ時代における地域活性化と観光産業に関する検討会」を開き、今後の宿泊業の振興策について議論した。
検討会は、宿泊業の多数を占める中小規模の事業者について、家業的な経営形態にとどまり、事業計画や財務諸表、各種データに基づく企業的経営が定着していない施設が多いと指摘。家業的経営の強みは生かしつつも、生産性、収益力を向上させる必要があり、経営改善の指針となるガイドラインを策定し、それに沿った経営に取り組む宿泊施設を支援するよう提言していた。
提言を踏まえて策定されたガイドラインは、「宿泊業の高付加価値化のための経営ガイドライン」と題され、(1)会計(2)持続可能性(3)労働環境改善(4)IT導入―の四つの「視点」から、宿泊事業者に求められる具体的な取り組み事項やその目的、経営上のメリットなどを示している。
登録規定
観光庁は、ガイドラインの策定にとどまらず、ガイドラインに沿った経営を行う宿泊事業者を登録する制度を創設した。法律などに根拠を持つ制度ではないが、「高付加価値経営旅館等登録規程」を定めた。
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