観光庁2023年度予算案 観光立国復活へ307億円


 観光庁の2023年度当初予算案は、一般財源と国際観光旅客税(以下、旅客税)財源を合わせて307億円となった。22年度当初予算比で38%増。インバウンドの回復、観光産業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)、持続可能な観光地域づくりなどに予算が計上された。観光庁は、宿泊施設の改修などを支援する高付加価値化事業を含む22年度2次補正予算の1500億2千万円と一体で運用し、コロナ禍からの観光立国の復活を推し進める。

市場開拓や地方誘客促進

◆新たな交流市場の創出事業 6億4900万円

 コロナ禍の影響などで暮らし方や働き方は多様化している。地域との関係性構築を通じて継続的な来訪を促進する「第2のふるさとづくり」やワーケーションなどの事業を推進することで、新たな観光需要の創出、交流・関係人口の拡大につなげ、地域活性化を図る。

 「第2のふるさとづくり」では”何度も地域に通う旅、帰る旅”を普及・定着させる。23年度は、戦略の策定、地域の受け入れ態勢整備に向け、地域と来訪者の交流拡大、滞在・移動環境の整備に関するモデル実証を実施する。

 ワーケーションの推進では、これまでの取り組みを踏まえ、企業の意向改善や地域の受け入れ態勢整備に向けたモデル実証などを実施し、裾野の拡大に取り組む。

◆ユニバーサルツーリズム促進事業 3千万円

 高齢者や障害者を含めて誰もが楽しめる旅行を普及する。バリアフリー対応やその情報発信に積極的に取り組む宿泊施設、飲食店、観光案内所を認定する「観光施設における心のバリアフリー認定制度」の認定数の増加と制度の周知促進を図る。利用者の利便性向上や認定施設のPRに向けて、認定施設のハード・ソフト両面のバリアフリー情報のデータベースを作成する。各施設の対応を評価するモニターツアーなども実施する。

◆広域周遊観光促進のための観光地域支援事業等 7億6300万円

 地方部への誘客、旅行者の周遊を促進するため、DMO(観光地域づくり法人)を中心に地域一体で行う調査・戦略策定、滞在コンテンツの充実、受け入れ環境整備、旅行商品の流通環境整備、情報発信などに補助金を交付する。

 補助対象者は、観光庁の登録制度における登録DMOや自治体。調査・戦略策定は、定額補助で上限1千万円。観光庁が選定する「先駆的DMO」に対しては上限2千万円。他の取り組みの補助率は事業費の2分の1など。

 

滞在価値の向上、態勢整備

◆地方における高付加価値なインバウンド観光地づくりの支援 1億円(加えて22年度2次補正予算から約6億円)

 旅行先での消費額が1人100万円を超える外国人富裕層などを誘客できる観光地づくりを支援する。22年度中にモデル観光地を10カ所程度選定し、総合的な施策を集中的に講じる。

 支援内容は、体制構築や中長期のビジョン設計のためのマスタープランの策定支援(専門人材の派遣、市場調査やマーケティング戦略策定)▽ハイエンドコンテンツの造成支援(企画・プロデュース、モニターツアー・実証、広報素材作成)▽人材派遣事業(海外の専門教育機関や一流ホテルへの人材派遣、地方の宿泊施設への専門家派遣)―など。

◆新たなインバウンド層の誘致のためのコンテンツ強化等 1億7100万円(加えて22年度2次補正予算から約24億円)

 インバウンドの本格回復に向けて体験型コンテンツの造成を支援する。テーマは、世界的に関心が高まっている持続可能な観光(サステナブル・ツーリズム)と、歴史的資源を活用した観光まちづくりの2本立て。

 持続可能な観光では、サステナブル・ツーリズムを実感できるコンテンツの造成や施設改修、物品購入などを補助する。

 歴史的資源を活用した観光まちづくりでは、城や社寺、古民家などの地域資源を観光に生かす。宿泊・滞在型コンテンツの高付加価値化に向け、計画策定や面的なコンテンツ造成、建造物の改築などを補助する。

 その他、クルーズ、インフラ関係の観光コンテンツの造成を支援する。

◆世界に誇る観光地を形成するためのDMO体制整備事業 5千万円(加えて22年度2次補正予算から約4億円)

 世界的な競争力を持つ魅力ある観光地域づくりを促進するため、全国の優良なDMOの体制を強化するため、補助金を交付する。

 (1)専門的知見や外国人目線を有する外部専門人材の登用に係る費用を支援(定額補助・上限1500万円)

 (2)中核人材の確保・育成に資する費用を支援(同500万円)

 (3)安定的な財源確保のための計画策定(同500万円)

 (4)宿泊税、入湯税、入域料などの地方税、受益者分担金・負担金などの導入に向けた合意形成に資する勉強会、シンポジウムなどの開催(同200万円)

◆地域の資源を生かした宿泊業等の食の価値向上事業 5600万円

 宿泊施設における食をテーマにした新規事業。ガストロノミー・ツーリズムの潮流なども踏まえ、地域の食材を有効活用するなど、食の魅力によって滞在価値を高め、付加価値の向上を目指す。例えば、宿泊施設と一流シェフのマッチングを支援し、地域の食材を有効活用しつつ、訴求力のある食の提供につなげる。宿泊施設における先進事例の収集、周知も行う。

◆観光地・観光産業再生のための人材育成・確保等事業 1億5千万円

 地域や大学の連携により、観光産業を支える人材育成のための教育プログラムなどを実践する。地域の小中高校生などを対象とした観光教育の取り組みも支援する。

 また、宿泊事業者における外国人材の確保では、制度周知セミナーの開催、国内外でのマッチング支援、地域への専門家派遣などを行う。

 

持続可能な観光を促進

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