日本商工会議所は4月25日、観光に関する意見書をまとめ、石井啓一国土交通相に提出した。インバウンド4千万人時代の到来など、観光を巡る環境が新たな段階に入ったとして、(1)旅行者をあまねく全国へ分散、拡大(2)ニーズの多様化に対応した観光コンテンツの提供(3)観光産業の競争力向上と人材育成―の必要性を指摘、それぞれについて提言した。
意見書は政府の「観光ビジョン実現プログラム2019」策定に先立ち、4千万人時代の到来を見据え、観光を地方創生実現の柱として振興していくために必要な事項としてとりまとめた。
同日、早川慶治郎・観光委員会共同委員長、酒井公夫・観光専門委員会共同委員長、佐々木隆・東京商工会議所観光委員長が石井国交相を訪問し、意見書を手渡した。
業界の人手不足解消では、総務省が2009年度に始めた制度「地域おこし協力隊」の活用を求めた。任期が終了した隊員が同じ地域に定住し、かつ観光関連事業に従事している割合が大きいことから、「地域創生施策としての協力隊拡充も踏まえ、各地の観光による地域振興に積極的に活用すべきだ」とした。
IoTやAI、ロボット技術を活用した宿泊施設、店舗運営の省人化・省力化に対する支援強化とともに、旅館の事業承継手法の一つとして、所有と運営の分離などの検討を含め、士業など専門家による伴走型支援を受け入れやすくなるような人的支援も求めた。
また、国際観光旅客税の使途では、外国人とのコミュニケーションツールとしての通訳機器を導入する地域や事業者への初期投資に充てることも検討すべきだとした。
石井国交相(中央左)に意見書を手渡す早川観光委員会共同委員長(同右)、酒井観光専門委員会共同委員長(右)、佐々木東商観光委員長(左)