日中の観光交流復活の機運を盛り上げるため、観光業界として中国へ3千人の「日中観光文化交流団」を5月に派遣する。主催は日本旅行業協会(JATA)、全国旅行業協会(ANTA)、日本観光振興協会(日観振)で組織する実行委員会。二階俊博ANTA会長(衆議院議員)は交流団をきっかけとした観光交流の活発化で「凍りついたような日中関係を早く打破したい」と日中の関係改善を成し遂げたい考えだ。
昨年11月、上海で太田昭宏国土交通相と李金早国家旅遊局長が会談し2015年、2016年の2年間に日中双方の交流拡大に向けた取り組みを進めることで合意した。このような動きを受け、観光交流復活の機運を盛り上げるため、中国側の協力も得て、大型の訪中団を派遣する。
後援は観光庁、日本政府観光局(JNTO)、在中華人民共和国日本国大使館、日本経済団体連合会、中国国家旅遊局、中華人民共和国駐日本国大使館。団の編成にあたっては、日本の観光関係者、自治体、経済界、文化界など幅広い関係者の参加を募る。団長には文化人を据える方針だ。
主要行事は5月23日に北京で開催する「日中観光交流の夕べ」で、両国のVIPによる歓迎あいさつ、エキシビション、会食が行われる。前日22日には北京で日本の観光関係者と中国側旅行会社による商談会、23、24の両日には一般消費者向けの訪日トラベルフェアも開催。24日以降はグループに分かれ、大連、河北省など中国各地を訪問する。
日中観光文化交流団について主催・後援団体は2月25日、東京都内で記者会見を開催した。
中国からの訪日客は増加しているのに対し、日本人の訪中は07年の397万人をピークに減少し、昨年は272万人まで落ち込んだ。二階ANTA会長は「中国側から何か改善する方法はないかと指摘があり、そのチャンスをうかがっていたが、このたび訪中団を編成して、中国の各都市を訪問し、観光交流について両国で意見を交換しようということになった。中国側の期待にこたえていきたい」と交流団の経緯と目的を語った。
実行委員長を務める田川博己JATA会長は、「中国は世界遺産をはじめ観光素材の宝庫だ。これを契機に中国の良さを再認識してもらうと同時に日中の地方と地方の交流も図っていきたい」と強調した。JATAは、日中観光交流団の事務局を担当。3月20日には役員会を北京で開くとともに、特別参観企画など訪中団の内容について現地の関係者と協議する。
山口範雄日観振会長は、「日中両国間には85の路線が就航している。日本の各地方と中国の各地方の相互交流を促進させ、ぜひとも日本各地に中国人観光客を誘致し、地方創生、地域活性化につなげたい」と意気込む。
中国側からは中華人民共和国駐日本国大使館の趙偉参事官が、「日中は一衣帯水の隣国。観光文化分野での交流は重要だ」と公務のため欠席した程永華大使のメッセージを代読。中国国家旅遊局日本代表処の張西龍首席代表は「シルクロードや大運河の世界遺産など、中国の各地の魅力を再確認してほしい」と語った。
観光業界などで組織する中国への交流団は、2000年に5千人、02年に1万3千人の規模で行われてきた。これらの活動に尽力してきた二階ANTA会長は、「凍りついたような日中関係を早く打破することが大事だと思うから、遠回りかもしれないが、敢えてこのような大変なことをする」と今回の交流団が日中の問題を解決する一助になると確信している。
主催・後援団体のトップが出席した2月25日の記者会見