観光庁と大学が主催する「第5回観光教育に関する学長・学部長等会議」が9日、東京都町田市の玉川大学で開かれた。主催大学を持ち回りにして2009年から毎年開催している会議。観光教育に取り組んでいる大学・大学院36校から学長・学部長ら52人が出席したほか、旅行会社、電鉄、ホテルなどの観光関連企業、観光関係団体、関係省庁などから37人が参加した。観光関連企業の出席は今回が初めて。パネルディスカッションやグループセッションで、人材育成への産業界の考え方や大学との連携などについて議論した。
観光庁の井手憲文長官は「国が育成を目指している『グローバル人材』とは、観光の分野だけでなく業界の垣根を越えて日本の若者に求められている理想の人材像だ。産業界側にはそういう人材を引きつける魅力がある業界になりうるかどうかが問われる」と冒頭にあいさつ。
今年度の主催大学である玉川大学の小原芳明学長は「長い間日本では観光は学問とみなされていなかったが、観光立国の国策化に伴って、学問として取り上げられる時代になった。今回の会議は産学官が一体となって観光研究に取り組む良い機会だ」と述べた。
プログラムでは、観光庁観光産業課の塩野進課長補佐による「観光産業の人材育成について」、玉川大学の益田誠也教授・観光学部長による「企業・大学向けアンケート集計結果」の各報告に続いてパネルディスカッションを実施。
「観光産業が求める人材と今後の観光教育」をテーマに、パネリストとして井手長官、首都大学東京の本保芳明教授(観光庁初代長官)、東洋大学の松園俊志教授、日本旅行業協会の越智良典理事・事務局長、日本ホテルの塩島賢次常務、ドンキホーテグループ日本インバウンドソリューションズの中村好明社長が登壇。玉川大学の折戸晴雄教授が司会を務めた。
各パネリストのうち、現状の問題点として本保氏からは「産業界が大学のやっていることを評価しておらずミスマッチが生じている」、松園氏は「インバウンドはアウトバウンドの裏返し。グローバル化は観光業の必然で、大学には当然グローバル人材育成が求められる」、越智氏は「学生側にも企業側にもブランド志向がある現在の就職・採用活動を修正する必要がある」、塩島氏は「日本のホテル業界は大卒を専門学校卒と同列ではなく幹部候補生として育てる必要がある」、中村氏は「観光業の概念を広げてとらえることが大事。ドンキホーテも立派な観光業だ」などの意見が出された。
パネルディスカッションに続いては、参加者が三つのグループに分かれて「観光経営マネジメン人材の育成」「グローバル人材の育成」「産学連携による人材育成」のそれぞれのテーマについてグループ討議を行った。
会議の様子