観光経済新聞 創刊75周年に寄せて 観光経済新聞社社長・積田 朋子


報道使命を再認識、業界発展に貢献

 小社はここに創刊75周年を迎えることができました。観光業界の多くの方々に支えられて75周年の紙齢を刻むことができましたことは何よりも読者の支持によるもので、まず感謝の意を表したいと思います。

 読者は情報の受信者であるだけでなく、発信者であり助言者でもあります。多くの優れた読者に恵まれたことが今日に至ったことであると痛感しております。

 小社は1950年4月に創業し、創刊千号(76年12月11日号)、1500号(87年10月3日号)、2千号(98年6月13日号)、2500号(09年1月24日号)、3千号(19年9月7日号)と発行を続けてまいりました。

 新聞事業は報道機関として社会性を踏まえると同時に適正な利益を求めながら発展しなければなりません。自力で採算ベースに乗せるためには読者の支持を得なければなりません。そして読者を背景に世論を形成しなければなりません。新聞社は社会的評価の割に企業として見た場合、規模が小さいと言われています。しかし業界の中で大きな影響力を持つという点では基幹産業に決して劣らないと思います。専門紙が業界の財産として、その力を発揮しなければなりません。そしてそのカギは読者の支持にあると思います。

 2012年5月「観光立国の実現」に情熱を傾けた江口恒明社長が逝去し、経営をバトンタッチされました。会社のかじ取りは苦悩の連続でした。社員にとって先代は経営者であると同時に、観光業界の先駆者であり、新聞製作の高度な技術を教えてくれる師であり、カリスマ的存在だったのです。一方、当時の私は会社の管理、総務担当の専務取締役で、編集経験もなくそんな新社長に対して、社員たちは頼りなさを感じていたはずです。企業経営において経営者のカリスマ性は成長を促す大きな推進力になります。強いビジョンとリーダーシップは企業文化を築き、外部との信頼関係を強化する力を持っています。社員を感化し組織全体の士気を高めます。トップダウンによる組織運営がうまくいかず、社員は冷め、組織全体の士気は下がり離職者が出るのではないかと随分と悩みました。観光業界の多くの方々が「この新聞はなくてはならない。応援する。がんばってくれ」との励ましで、最初から完璧を求めすぎず、私も社員も乗り越えられました。

 日本が「観光立国」の実現へ並々ならぬ熱意を示す中、それを語る上で欠かせないのが、二階俊博氏(自民党元幹事長)です。江口前社長は1990年、当時運輸政務次官だった二階氏にインタビューし、その場で意気投合。以後、政治家とマスコミという立場を超えて観光立国へ二人三脚でまい進し、2008年に観光業界の悲願だった観光庁創設を果たしました。

 2003年、小泉首相(当時)の主導で「ビジット・ジャパン・キャンペーン」がスタートし、2006年には観光立国実現を目指した「観光立国推進基本法」が成立。訪日外国人旅行者の拡大が国の方針に織り込まれました。

 その後、リーマンショック、東日本大震災などでその数は伸び悩みましたが2012年安倍政権のもと、観光が国の成長戦略の柱に掲げられ査証(ビザ)の緩和、免税品の免税範囲拡充と手続きの簡素化が進み、2018年は訪日外国人旅行者が3119万人、旅行消費額も4兆5千億円と日本経済をけん引。2020年2月から新型コロナ感染症の3年間、観光産業は大きな打撃を受けましたが、2024年、訪日外国人旅行者は3687万人、旅行消費額は8兆1千億円まで大幅に改善し、2030年の目標数値6千万人達成の実現に近づいてきました。

 今年4月13日に大阪・関西万博が開幕します。「いのち輝く未来社会のデザイン」のテーマのもと国内外から数多くの旅行者が日本を訪れます。小社はこれを契機に地方創生に向けて、観光客の受け入れ態勢に一層磨きかけるよう紙面で啓蒙していきます。

 新たな時代を迎え、新しい潮流が台頭する中、小社も越えなければならない多くのハードルを抱えています。不確かな情報や虚偽の情報があふれる時代に良質な報道を続けるメディアの役割、価値は高まっています。情報の接し方が多様化している現代では従来の紙面やニュースサイトだけの提供では良質なコンテンツや確かな議論を届けることが難しくなっています。

 新聞社も既存のビジネスモデルからの転換が迫られています。今後は新聞の強みとネットの強みを融合させた新しいメディアに挑戦します。

 創刊75周年という大きな節目に報道使命を再認識するとともに、これまで築いてきた観光業界における確固たるポジションを伝統として大切にし、次世代に受け継ぐと共に、これからの時代も観光業界発展に貢献し続け、挑戦し、革新を続けることで、100年企業を目指してまいります。

本社社長・積田朋子
本社社長・積田朋子

 
新聞ご購読のお申し込み

注目のコンテンツ

第38回「にっぽんの温泉100選」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 1位草津、2位道後、3位下呂

2024年度「5つ星の宿」発表!(2024年12月16日号発表)

  • 最新の「人気温泉旅館ホテル250選」「5つ星の宿」「5つ星の宿プラチナ」は?

第38回にっぽんの温泉100選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月1日号発表)

  • 「雰囲気」「見所・レジャー&体験」「泉質」「郷土料理・ご当地グルメ」の各カテゴリ別ランキング・ベスト100を発表!

2024年度人気温泉旅館ホテル250選「投票理由別ランキング ベスト100」(2025年1月13日号発表)

  • 「料理」「接客」「温泉・浴場」「施設」「雰囲気」のベスト100軒