日帰り温泉ツアー 改正法施行に対応
近畿日本ツーリストは1日、ストーマ装具メーカーのアルケア(東京都墨田区)と協働し、人工肛門や人工膀胱(ぼうこう)などをつけて生活している「オストメイト」と呼ばれる人やその家族を対象にした、日帰り温泉ツアーを実施した。参加者の1人は温泉につかりながら、「大浴場に入れて体だけでなく心も温まった」と満足の様子だった。
障害者の求めに応じ、できる限り手助けをする「合理的配慮」を企業などに義務付ける改正障害者差別解消法の施行(4月1日)を受けた試み。
ツアーにはオストメイトの男女12人(40~90代)を含む計16人が参加し、龍宮城スパ・ホテル三日月(千葉県木更津市)での入浴や、アルケア千葉工場(千葉市)では講義を受け、製造工程などを見学した。
三日月では、アルケアが開発した目隠しと防水機能を備えた入浴用シール「バスラックシール」をストーマの上から貼って入浴。同シールは「装具が目立ち人目が気になる」「装具が濡れてしまう」という課題から生まれた製品で、凹凸が目立ちにくいまだら模様を採用している。
参加者は広々とした大浴場で、足を伸ばしながらお湯につかり、温泉を堪能。
40代の女性は「普段は貸し切り風呂を利用することが多いが、大浴場に入ることができて体だけでなく心も温まった。このシールはとても快適」、70代の男性は「膀胱がんになって7年。久しぶりに湯船につかって汗を流すことができた。ツアーに参加し、同じようにストーマ装具を使っている仲間がこれだけいると知り、勇気をもらえた」と笑顔で話した。
国内のオストメイト人口は20万人以上といわれる。ほとんどは後天的な要因が多く、その数は年々増加している。ある調査によると、日常生活で困った経験の1位が「温泉に行けなくなった」(60.2%)で、外出や旅に不安を感じている人が多い。
近畿日本ツーリスト事業推進本部・営業企画ユニバーサルツーリズム推進担当の伴流高志さんは「バリアフリー化が進んでいる社会でも、内部障害のある方に対する認知度が他の障害に比べて低い現状にある。障害がある方でも誰もが安心して旅を楽しめる社会がつくれるよう頑張っていきたい」と強調した。
入浴前に目立たないようシールを貼る
ツアーには16人が参加した