近畿日本ツーリスト 代表取締役社長 髙浦雅彦氏に聞く


髙浦社長

ウェブ比率、販売量高め宿泊増売

 ――昨年10月1日に新生近畿日本ツーリスト(KNT)が発足した。従来の地域会社と何が違うのか。

 「事業構造改革と再成長に向けた事業基盤固めとして組織の再編を行い、地域8社、ウエブトラベルの9社が一つとなった。従来は、各地域内で情報展開がなされ、ローカルルールを用いながら対応していた。今はナレッジを全国で共有し、本社から全国に販売、管理の両面での支援、全社員の底上げをしている。例えば、教育旅行を提案する場合、方面、宿泊地、料金で他社と違いを出すことは難しい。SDGsも今では基本となり、高い水準でコンテンツを提供できるかどうかは、情報や知見が鍵をにぎる。今は最新の情報、事例の共有を常に行っており、受託、運営の成功につながっている」

 ――新型コロナウイルスの感染症の影響はどう捉えているか。

 「MICEを中心とした法人系の需要回復遅れが見られる。国内の個人旅行に関しても、国が主導するGo Toトラベル事業の再開が遅れるなど、コロナ禍前の姿からは遠い。平常時には主力事業であった教育旅行も、この1年は緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が繰り返され、本格化手前の状況だ。修学旅行の実施率は、コロナ前と比べると、2021年度は20年度の36%を上回る65%まで回復してきたが、宿泊から日帰りになるなど、日程の減少の影響も響いている。一方、ワクチンやPCR検査など公務系の受託事業は増加し、他にも非旅行業による取扱高の増加はリカバリーへとつながっている」

 ――KNT―CTパートナーズ会(KCP)が発足し、約3年がたった。どう評価しているか。

 「近旅連とひまわり会、クラブツーリズムパートナーズ会の三つが一つになった。それぞれの強み、ネットワークを生かし、シナジー効果を狙ったが、3年のうち2年半は稼働できていなかった。今年度から実際に動きだしており、これからが本当のスタートとなる」

 ――中期経営計画は2年目を迎えている。ウエブトラベルを吸収したが、ウェブ販売の進捗(しんちょく)については。

 「ウェブ販売の比率は、21年度が41.6%となり、コロナ禍前の18年度比較しても、着実に高まっている。また、従来の紙のパンフレットを使用した販売からウェブを使った販売への移行が順調に進んでいる。22年度はウェブ比率50%を目標として掲げ、2025年度には70%まで上げていく計画だ。一方で、販売量は期待値よりもまだ低い。比率は指標の一つとして重要だが、今年は販売量にもこだわっていく」

 ――店舗数はここ数年大きく減らした。今後の在り方は。

 「数年先までの計画は立てているが、KNTの強みや時代環境に合わせて検討、実行していく」

 ――22年度の事業展開は。

 「上期は、一般団体の需要が想定以上に遅れている。21年度に成果を上げた公務受託事業の受託と、21年度から22年度に延期されている教育旅行実施の2点を確実に遂行していく。もう一つ大事なこととして認識すべきは、今あるワクチン、PCR検査の受託事業には必ず終わりがあること。自治体にはアウトソーシングしたい業務が他にも多くある。これまでに構築した関係性を生かしながら、旅行に限らないBPO事業の提案も積極的に進めていく」

 ――下期については。

 「下期に向けては、各都道府県の企業など一般団体、そして再訪期を想定するインバウンドの取り込みをアフターワクチンの事業として本格化させていく」

 ――インバウンドはどのような展開を。

 「私が前に在籍した近畿日本コーポレートビジネス(CB)では、大企業のMICEを行っている。KNTでは各都道府県の企業や留学生など学校関連の取り扱いから始めていく」

 ――今後の伸長を期待している事業は。

 「実績を上げている公務受託事業のさらなる深掘り、そしてその周辺事業には期待している。また、最近では北海道マラソンの受託をするなど、スポーツ事業にも注力している。全国へのネットワークが生きる領域であり、率先して取り組んでいく」

 ――25年には近鉄グループの本拠である大阪・関西で万博がある。どのような取り組みを考えているか。

 「博覧会協会に複数の社員を出向させている。3年前のこのタイミングでは、シャトルバス運行スケジュールの策定業務を受託し、テスティングをしている。ここからが本番であり、今後は大会関係の輸送業務への参画や、05年に名古屋で開かれた『愛・地球博』と同様に、企業や自治体、修学旅行などあらゆる分野に向けた提案を行っていく。昨夏の国際的スポーツイベントでの大会関係者バス輸送業務のレガシーなども必ず生きてくる。万博を成功できれば、大阪で申請されたIRの採択後の取り込みにもつながってくる」

 ――今後のKCPとの連携については。

 「現在、委員会は(1)教育旅行(2)未来創造(3)インバウンド(4)ウェブ(5)プロジェクト―の五つがある。プロジェクト委員会は今年度から新しくできたもので、タイムリーな話題を都度議論していく。五つの委員会を通じた活動はもちろん、本格化するキャンペーンなど活動を積極的に盛り上げ、成果を上げていく」

 ――宿泊券増売に向けての施策は。

 「各連合会と定める目標の達成を目指す。昨年10月から始めた『KNT ハイクラスサイト Blue Planet』や、KDDIと連携し、KDDIの会員向けに販売を促す動線を設けるなど、販路拡大の取り組みは日々行っている。コロナ禍で見通せない部分もあるが、愚直にお客さまのニーズを捉え、需要を獲得していく」

 ――新生KNTの強みを三つ挙げるならば。

 「機動力、提案力、そしてKCPとの強い絆だ」

 ――今年のスローガンを掲げてほしい。

 「『黒字の永続化』だ。KNTは21年度、赤字から黒字に転換した。4月に全社会議を行ったが、雰囲気が大きく変わり、士気が高まっている。元々元気な会社であり、社員全員が動きながら考える気質がある。21年度は全社員が未経験事業にチャレンジしてくれたおかげで実績につながった。今後も積極的に動き、黒字を必達する」

 ――最後に、KCPの会員にメッセージを。

 「堀会長が『共生・共創』と話されているが、私も同感だ。三つの会が一つになり、互いに好奇心を持つことがシナジーを生む。ここ2年半は悔しくも活動できなかったが、今年度は『共生・共創元年』として、共にまい進していきましょう」

 

髙浦社長

【聞き手・長木利通】

 
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