和歌山県湯浅町と湯浅町日本遺産推進協議会は3月27日、同町が申請した醤油醸造に関する歴史や文化が「『最初の一滴』醤油醸造の発祥の地 紀州湯浅」として文化庁の日本遺産に認定されたことを記念し、シンポジウムと物産展を東京・日本橋のホールで開催した。
湯浅町は、醤油発祥の地と言われ、瓦屋根と格子の連なる、醸造業で栄えた街並みが印象的。昨年4月に日本遺産に登録された。日本遺産を構成する主な文化財は、国選定の重要伝統的建造物群保存地区の街並みや、町の文化財に指定された醤油の醸造用具など。
シンポジウムで同町の上山章善町長は「醤油文化の魅力が五感で楽しめる『湯浅まちごと醤油博物館』が3月29日にオープン。日本遺産認定を機に、街並みと物産品の情報発信を強化し、インバウンドを含め、多くの人たちに当町を訪れてもらいたい」とあいさつした。
マンガ家で大阪芸術大学教授の里中満智子氏による「湯浅町まち全体醤油博物館構想について」と題した基調講演も行われた。
地元の地域振興を応援しようと、二階俊博衆院議員(自民党幹事長)が駆け付け、「紀伊半島の地元産品をふるさと納税の返礼品にしたことで、前年比490%増、50億円に迫る勢いだと伺っている。地域の高い意気込みと英知を結集したことが成果につながった。われわれも和歌山県の国内外との交流、発展のため活動していく」と祝辞を述べた。
パネルディスカッションは、「美味しい日本遺産 最初の一滴から世界へ・世界から最初の一滴へ」がテーマ。和歌山大学を卒業したフリーアナウンサーの川田裕美氏がコーディネーターを務めた。
パネリストの日本文学研究資料館長、ロバート・キャンベル氏は「醤油のことを英語でソイソースと紹介するが、諸外国で造る醤油との差別化を図るためにも、呼称を改めるブランディングを考えるべき」と提案。近茶流嗣家・柳原料理教室副主宰の柳原尚之氏は「日本料理と醤油は切り離せない関係。湯浅にはその一滴を造った歴史に沿った新たなストーリーづくりを目指してもらいたい」と語った。
基調講演の講師も務めた里中氏は「環境は素晴らしい。観光交流だけではない定住人口の拡大への取り組みが課題だ」と指摘。和歌山大学副学長の足立基浩氏は「主人公は地域住民の皆さま。大勢の方たちに全国から会いに来てもらうため、住民の人情の豊かさや温かさを伝えるべき」と訴えた。
討論に参加した湯浅町の上山町長は「指摘を受けて自信になった。今後、イベントを通し、湯浅町の活性化を図っていく」と語った。
物産展には、創業から176年の歴史を持つ町一番の老舗「角長」の醤油をはじめ、金山寺味噌やミカン、ちりめんなどの地元産品が並び、商談会も行われた。
また、外国人富裕層を対象とした紀伊半島プレミアムツアーを造成した中紀バスの高垣太郎社長が「湯浅の日本遺産、熊野・高野山の世界遺産を巡るプラン」について説明した。
国会議員では、二階氏のほか、和歌山県選出の世耕弘成経済産業相、鶴保庸介・自民党観光立国調査会事務局長が駆け付け、祝辞を述べた。
シンポジウムのパネルディスカッション
紀伊半島ツアーで使用する特別仕様の中紀バス