住宅宿泊事業法案(民泊法案)は、1日の衆院本会議で可決され、参院に送付された。政府は、衆院国土交通委員会の審議(5月30、31日)の中で、民泊事業での本人確認のあり方、分譲マンションの管理規約との関係などについて運用方針を明らかにした。
□本人確認
民泊事業者、管理業者には、宿泊者名簿の備え付けを義務付け。宿泊者の本人確認は、旅券の提示などを対面もしくは対面と同等の手段で行うように求める。家主不在型民泊での鍵の受け渡しや本人確認について国土交通省土地・建設産業局の谷脇暁局長は「鍵の受け渡しも、本人確認と併せて管理業者が行う。鍵については管理業者の営業所での受け渡しのほか、業務の一部を再委託して、近隣のホテルのフロント、24時間営業の店舗などでの受け渡しも可能と考えている」と説明。
加えて谷脇局長は「特区民泊(国家戦略特区の民泊)では、カメラの映像を通じ遠隔で本人確認を行うとともに、ランダムに変更されるナンバーキーを電子メールなどで付与して電子錠の開錠を行うなどの事例も出ている。このような方法も想定している」と述べた。
□苦情対応
事業者や管理業者には、地域住民からの苦情の対応を義務付け、玄関などに届け出番号、連絡先などを記載した標識を掲示させる。一方で行政の苦情対応として観光庁の田村明比古長官は「観光庁は、都道府県などと連携してワンストップの苦情対応窓口を設置することを検討している。受け付けた苦情は、関係行政機関、都道府県などに通知して必要な対応を求める」と述べた。
□共同住宅
分譲マンションなど共同住宅の一室を民泊に利用する場合のトラブルの防止では、民泊事業者には届け出の際、民泊を禁止する旨の管理規約、管理組合の決議などがないかを確認することを要件とする。国交省住宅局の由木文彦局長は「マンションの管理組合が、民泊を許容するか否か、管理規約に明確化することが望ましい。ひな型として標準管理規約を改正し、民泊を許容する場合、禁止する場合、双方の規定例を示すことにしている」。ひな型は法案成立後、早期に公表できるよう準備する方針。
□海外サイト
海外に本拠を置く民泊仲介サイトに対する規制の実効性の確保については、観光庁の田村長官が「外国において民泊サービスの仲介を行う会社についても、登録を受けることを必要とするなど規制の対象にする。規定に違反した場合は、業務改善請求、業務停止請求を行うとともに、登録を取り消すことができる」。観光庁は、民泊事業者が仲介業者の登録の有無を確認できるように名簿を一般に公開する。
□無許可営業
届け出をせずに違法に営業する民泊事業者は、無許可営業で旅館業法違反となる。厚生労働省生活衛生・食品安全部の北島智子部長は「無許可営業者に対する都道府県知事などによる立ち入り権限の創設や罰金の上限額の引き上げなどを内容とした旅館業法の改正法案を今国会に提出したところ」と説明した。
旅館業法の改正法案には、無許可営業者に対する罰金の上限額を3万円から100万円に引き上げることが盛り込まれている。