関西の取り組みと今後 (一社)日本旅館協会関西支部連合会相談役(大阪府旅館ホテル生活衛生同業組合理事長)岡本 厚氏に聞く


(一社)日本旅館協会関西支部連合会相談役(大阪府旅館ホテル生活衛生同業組合理事長)岡本 厚氏

万博の開幕に向け機運高める ふるさtoらべる拡大に注力

 ――5月に日本旅館協会関西支部連合会の会長を退かれた。この2期4年を振り返ってどうだったか。

 「コロナ禍中の2020年に会長に就き思うような活動ができない面はあったが、会員のメリットになる取り組みもできた。一番は旅館ホテルの電気代を法人カードで精算できるようにしたことだ。電気代支払いなどを法人カードにまとめることでポイントのリターンも大きく、会員の皆さんに喜んでいただけた」

 「会員の今一番の関心事は、人手不足や外国人雇用などの労務関係だ。昨年9月に業界として政府に要望したことで、各地の運輸局に人手不足対策に関する働きかけがあった。関西では国土交通省近畿運輸局が非常に協力的で、それ以前から『旅館の魅力を発信する活動』などを行っていたご縁もあり、留学生が多い大阪観光大学での就職マッチング会を実現することができた。これについては総務委員会も頑張ってくれて、今年度以降も実施する道筋ができたと考えている。近畿運輸局の協力では、旅館で働く魅力を紹介するリクルートのためのビデオも作成できた。今後多言語化なども必要かと思うが、これも活用していってほしい」

 「関西連合会独自の委員会のうち、今回総務と労務の委員会が一つになった。新しい委員会では、外国人雇用のうち技能実習に関して、今後制度も変わってくるとは思うが、現在監理機関を通して毎月経費を払わなければならないところを、関西支部としてまとめて雇用する窓口を作れないか、あるいは海外の大学と連携をしてそこを窓口にインターンシップを受け入れていくような仕組みを作れないかという話も出ている」

 ――関西、そして大阪の状況を伺いたい。

 「ご承知の通り、京都、大阪の中心部、城崎、有馬といった著名な温泉地はインバウンド中心に活況で19年を上回る入り込みとなっている。その一方で、地方部にはまだその勢いが波及していない。一例だが当館の場合、インバウンド客はまだ16年、17年の半数程度だ」

 ――大阪・関西万博の開催が来年に迫っている。

 「大阪の旅館ホテル組合では、万博協会に協賛金を払って組合名の入った万博のマスコットキャラクター『ミャクミャク』のぬいぐるみを会員分手配して、フロントに置いてもらったり、入場券を会員に購入・配布して、まず旅館の人も万博に行こうという流れを作ったりしている」

 「大阪の旅館ホテル組合として、万博に絡めた事業はまだ具体化していないのだが、旅館業界として機運醸成に取り組んでいかねばならないとは考えている」

 ――関西の旅館ホテル業界では、万博ムードは高まっているのか。
 「ご当所・大阪の旅館業界の中でも今一つ盛り上がりに欠けていると感じており、他府県でも同様だ。70年万博を知っている人間が少なく、本当に忙しくなるのか、皆、半信半疑であるのが一因だろう。70年万博の時私は中学1年生だったのだが、当館もお客さまであふれかえり、両親は目の回るような忙しさだった。今と昔は違うとは言うが、それでもやはり万博、今後国内団体を中心に動いてくるだろうし、間違いなく忙しくなる」
「今はマスコミによるネガティブ報道の影響が大きい。だがそれを跳ね返すだけのワクワクするような情報が今後万博協会から出てくることを期待したい」

 ――これから注力されたいことは。

 「昨年日本旅館協会として、丸紅運営の現地決済型ふるさと納税『ふるさtoらべる』と提携した。返礼品の電子クーポンを宿泊代に使えるサービスで、クレジットカードの決済手数料が軽減できたり、デジタルサイネージなどの販促物も丸紅側が提供してくれたりするなど、旅館の負担を増やさずに利益向上につなげられるものだ」

 「会員が集めた寄付額の0.5%が丸紅から旅館協会にも支払われるのは業界としてもメリットだ。会員経由で紹介したゴルフ場なども対象施設になり、紹介施設への寄付額の0.5%も旅館協会に入る。これはNHKの手数料に続く旅館団体の財源として非常に期待できるものと考えている」

 「これまで都市部の自治体などではふるさと納税への関心が薄かった。だがふるさtoらべるならば、都市部へのふるさと納税の可能性も広がる。ただ導入は自治体が決めることなので、特に市町村レベルでの導入が進むよう、働きかけに力を入れていきたい」

 おかもと・あつし 神戸大学卒業後、1998年から不死王閣社長。2013年から大阪旅組理事長。大阪府出身、66歳。

 【聞き手・小林茉莉】

 
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